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VUCAな環境で来年の計画を策定する

VUCA

 

来年の今頃はどのような働き方になっているか、顧客のニーズはどのように変化しているか、COVID19は終息しているのか、無事オリンピックは実施されているのか、など、不確実性の高い状況で計画を策定していくのは簡単なことではありません。このようなビジネス環境での計画の策定は、どのようなものになるでしょうか?

 

目次

不確実な環境とは?

計画の策定の話をする前に、先ず初めになぜ不確実性の高い環境で計画の策定をするのが難しいのか、を理解していきたいと思います。この不確実性の高い状態を表すのに最近よく使われるVUCAという表現があります。諸説あるようですが、元米陸軍大将George Casey Jr. のインタビューによるとVUCAという表現は、米軍が1980年代後半のソビエトの崩壊後に起きた環境の変化をVUCAと表現しました。その環境とは、権力、技術、情報、そして経済的・軍事的資源が、これまでは国家間での争いが中心だったのに対して、非国家にも分散している多極世界化した今までにない危険な世界のことを表していました。
ビジネスの世界でも使われるようになったVUCAという言葉ですが、ビジネスシーンでどのような事象があるかの例をご紹介します。


ビジネスにおけるVUCAとは
  • Volatile(変動性): 今までになかったような早い変化とその大きさを意味します。最近では株式や石油価格の乱高下、消費者のオンラインで購入する頻度や量の増加スピード、在宅勤務などによる消費者のニーズの変化スピードなどが該当します。
  • Uncertain(不確実性): 今まで以上に将来を予想することが難しくなったことを意味しています。わかりやすい例としては、自然災害はもちろんのこと、国家間関係の変化によるビジネスへの影響などがあります。国家間の関係性悪化、覇権争いに影響され、特定の国の商品の非買運動や企業への制裁、取り締まり強化などが起きています。
  • Complex(複雑性): 何か計画を策定する際や物事を実行する際に、考慮する必要のある物事の幅と深さが増していることを意味しています。例えば、企業のサプライチェーンが1次、2次、3次と深くなり、自然災害やCOVID19の時には、パーツが届かないために製造ラインをストップせざる得ない状況になりました。
  • Ambiguous(曖昧性): 物事の境目があいまいになってきていることを意味しています。代表的な例としては、AirbnbやUberなど他企業の既存のサービスと同様の機能を提供しながら、他のサービスや異なるベネフィットも提供していいます。
  • このような例以外に、海外市場に進出する際に顧客ニーズ、商習慣、税制、ビジネスのインフラが大きく異なったりする状況もVUCAな環境の例として使われることがあります。では、このような環境で計画の策定はどのようにしていけば良いでしょうか。

    VUCAな環境での計画策定

    計画といっても企業では、企業全体の計画(全社戦略)、部署ごと、製品ごと、様々な観点での計画があります。ここでは、企業戦略の観点で事例を使いVUCAな環境での計画策定に関して紹介していきます。

    ラーニング・スクール(Hondaの事例)
    ヘンリー・ミンツバーグ教授の著書で企業戦略の策定方法の種類を書いた「戦略サファリ」の中で、ラーニング・スクールという1つの戦略策定方法が紹介されています。本書の中では、ラーニング・スクールとは、“strategy formation as an emergent process”(創発的プロセスによって戦略が構築される)と説明されています。このラーニング・スクールは、想定していない環境の変化に柔軟に対応するのに適した戦略構築方法と説明されており、その具体的事例として1950年代後半から60年代にかけて米国市場に進出したHondaが紹介されています。

    1959年、イギリス産のバイクが占める米国市場における外国産バイクの市場シェアが49%だったのに対して、1966年には、Hondaだけでシェア63%まで急成長しました。この成功を調べる為に、リチャード・パスカル教授が当時のHonda社員にインタビューをしたところ、「米国進出時には、戦略や計画などはなく、日本の政策で海外進出を後押しするものがあり、それを活用した。大型バイクが人気な米国市場では、Hondaの250ccや305ccのバイクが売れるのではないかと社内で話にあがっていた。」という話でした。
    実際に進出すると、米国の小売チェーン店シアーズのバイヤーから、Honda社員が移動手段として使用していた50ccのスーパーカブをシアーズで販売したいとの問い合わせが来ました。
    しかし、Hondaは、大型バイクのイメージを壊してしまうかもしれないということで、販売を躊躇し、進出した当初スーパーカブは販売せず、大型のHondaバイクのみ販売していました。それが多少売れ始めた頃、長距離を早いスピードで運転する米国では、Hondaの大型バイクの耐久性に問題が発生し始めました。そして、故障する大型バイクが増えるにつれ、スーパーカブ以外に販売できるものが無くなり、米国市場で販売することを決めました。
    このように、最終的に売れたのはスーパーカブで、この結果にたどり着いたのは、Honda社員が現地で消費者や市場の反応を自分で体験、学習しながら、臨機応変に対応したからでした。パスカル教授は、これを可能にしたのは、Honda社員の献身的姿勢、現場にいたHonda社員に責任が与えられ重要事項も意思決定できたことが要因だと説明しています。

    ラーニング・スクール 5つのポイント
    ミンツバーグ教授は「戦略サファリ」のなかで、Honda社員がこのような状況で自分の体験と市場の反応をもとに試行錯誤し、最終的に突出した成果をあげた事を事例に使い、ラーニング・スクールのアプローチを戦略策定に使う時に注意する5つのポイントをまとめています。

    1. 複雑で不確実な環境では、戦略策定するのに必要な情報は集まらず、現場での出来事から学びながら戦略を形作っていく。
    2. 組織を牽引するリーダーだけではなく、組織内の様々な人材が継続して、自分や他者の経験から学ぶ。
    3. 創発的に戦略を策定していくには、上記2で学習した人材の中でも、キャパシティと学習する環境が与えられている人材から発案されるアイディアが、組織の上層部に認知・サポートされ、全体の戦略に取り組まれていく。
    4. 組織を牽引するリーダーは、創発的に戦略を策定していくプロセスを組織内で設計していく。そのプロセスの本質とは、前提と結果、決まり事と経験学習、安定と変化、それぞれの関係性を構築していくこと。
    5. 今までの傾向をもとに戦略が作り出され、それが目標となり、最終的には今後の企業活動を策定していく指針となる。

    そしてこれから…

    最近、社外の方とミーティングをする際に、「来年の計画はどのように策定されていきますか」という質問をすると、多くの方が、「どうなるかわからないので基本は昨年や今年と同様の予算を確保し、柔軟にその時々で調整していく」というお話を聞きます。今後の計画を策定していく時に重要なのは、計画の内容以上に、計画を進めていたときの経験をどのように、その後の計画に反映していくプロセスがあるか、ではないでしょうか。

     

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