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普通がすごい

あじさい

カレンダー

私が子供のころ、6月のカレンダーの絵といえばアジサイにカタツムリ、あるいは傘をさしたカエルなどの記憶がある。本当の記憶なのか、私が勝手につくりあげたイメージなのかは定かではないが、はたして現代のカレンダーでは、6月の挿絵は何が描かれているのだろうか?

今は6月中旬、これを書いている今日の気温は31℃、もう既に真夏日だ。今この瞬間、今月のカレンダーの挿絵を決めるとしたら、冷えた白い乳酸菌飲料が入ったグラスと扇風機か、あるいはスイカにカブトムシ、いや、砂浜にビーチパラソルでも良いかもしれない。どうやら今年は梅雨入りが遅れているらしい。遅い梅雨入りのときは、真夏並みの危険な暑さに要注意と、テレビの報道番組で言っていた。近年の夏の猛暑日や、ゲリラ豪雨といい、もはや何が異常で、何が普通なのかわからない。

ふと、最近のカレンダーは6月をどう表現しているのか気になり、家のカレンダーを探したところ、カレンダーそのものがない。全くないわけではないが、絵が描いてあるようなカレンダーはわが家にはなかった。1週間ごとの家族の予定を書き込めるWeeklyプランナーと、私が仕事で使用している卓上カレンダーのみ。妻とはスマホのカレンダーアプリで予定を共有しており、主にはそれでスケジュール管理をしている。壁に貼るようなカレンダー自体がもう普通ではないのかもしれない。

普通とは

普通とは何か。普通なんてない。でも個々の頭の中で、普通と思っている何かは存在する。経験と記憶、そしておそらく常識と呼ばれる何かが作用して、それぞれの頭の中に普通を形づくるのだろうか。

普通という言葉は、どこにでもあるような、特別なにか違いがあるわけでもない、ありふれた、あたりまえなどで説明をされている。つまり特別ではない、特段特徴のない、なんら他と変わらない何かを指す言葉。厳密に言うと、他と変わらない何かというのはまずもって自然界では存在し難い。普通というものはすなわち、他と違っているということを認めず、一括りにされてしまった存在ということなのかもしれない。

今はVUCAと言われる予測困難な時代。多様性を尊重し、個性を認め合い、伸ばし合うことを求める時代。もう、普通なんて言葉が入り込む余地はない時代なのかもしれない。違って当たり前、異常が正常、違いがわからない男なんてコーヒーを飲む資格すらない。

異変探しゲーム

わが家では、異変探しゲームが大はやり。いわゆる『8番出口ライクなゲーム』を子供たちは多いに楽しんでいる。オリジナルである『8番出口』というゲームは、地下鉄の駅の通路のようなところで、異変があったら引き返し、異変がなかったらそのまま進むという単純なゲームになっている。正しい選択ができると一段階進み、間違うと最初の段階に戻ってしまう。これを0番出口からスタートし、間違わずに8番出口まで到達するとクリア、つまり地下から地上に出られるという内容である。

異変がないかと慎重に探すのだが、異変が見つからない。つまり普通の状態かもというときほど、ドキドキ緊張する。何か異変を見逃しているのではないか?普通なんてありえないのではないか?と疑いながら進むときが一番不安だ。普通が不安というなんとも現代的なゲームになっている。普通というのが尊く、有難いとも解釈ができるような気もする。

『8番出口』のおかげで、わが家では家族で出かけて地下鉄に乗るときなどは、ゲームの中で登場するような通路を見つけると、「あれ異変じゃね?」「あのポスターも変じゃね?」「あ、あの通行人大きすぎない?」「歩くの早くね?」「やべ、引き返せ!」などと、なんでもない普通の地下鉄駅通路が、特別な遊び場になったようにはしゃいでいる。「これは異変というより、良い変化 (いい変) だね」なんて言ってみたが、子供達からは「普通!」という評価。面白くもなんともないから「普通」なのだとか。そうか、ここにまだ普通は存在していたのか。

企業における普通

企業などの組織内で、上司が部下に「君、これは普通こうだろ!」などという場面があるが、上司の普通と部下の普通が同じとは限らない。同年代でも価値観が多様化しているなか、ジェネレーションや経験に差がある間柄では、普通なんて存在していないだろうと思う。口に出して指摘されるかどうかは、その組織の風土や文化に依存するが、口に出さずとも「そんなの知りませんよ」という反応が普通、いや、一般的だろう。

しかし一方で、本当に強い組織では、おそらく当たり前に普通が存在していると想像できる。多くの企業が、コアバリューやシェアードバリューと呼ばれる行動指針や価値観を示している。企業理念やビジョンなども似たような目的を持っているかもしれない。

これらは集団で成果を追い、組織として成功するためには、そこに所属するメンバーが、結果を出すために必要と思う価値観や行動指針を定め、そのものさしを提示している。つまり、これはその組織として何が当たり前であるか、何が自分たちにとって普通であるかを明文化している。

言葉にしたからといって、そもそも多様な人々が同じように解釈するかというと、それは難しい。皆が同じ言葉から違うイメージを作ってしまっては意味がないので、何が普通かを明確に共有する必要はある。その結果として、自分たちの普通が何かをお互いに理解し、会話の中で「普通こうでしょ!」「確かにそうですね!」なんて言葉が飛び交っている組織は、きっと強いと思う。

普通というのは、多様性の時代には、それを持つことこそが特別なことであるという理解をしておく必要があり、普通を持っているという特別な組織になるべく、人材開発、組織開発に勤しんでいきたい。

余談で恐縮なのだが、この多様性の時代にわが家は普通で溢れている。
私「今日、学校はどうだった?」  小5の息子「ふつう~」
私「楽しかった?」  小5の息子「ふつう~」
私「給食は美味しかった?」 小5の息子「ふつう~」
私「給食は何だったの?」 小5の息子「忘れた~」
音信不通にならないだけ、まだ良いかと思っている。

 

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筆者紹介

山田 琢 Taku Yamada
クインテグラル株式会社

グローバルな仕事に従事しながら、国および企業文化の違いによる組織力の差に興味を持つ。それ以来、より良い組織を作るにはどうしたら良いのか、そもそも良い組織とは何かを探し求め、組織開発ファシリテーター・コンサルタント、企業内人事などに従事し、2018年より現職。人材育成の領域から、より良い組織作りに貢献することを目指している。

 


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