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マイクロアグレッション:インクルーシブな職場にするきっかけに

micro aggression

 

ダイバーシティからマイクロアグレッションへ
本ブログは、2017年、ミレニアルズを説明するブログからスタートし、早いもので4年目になりました。平均すると1か月に1回の割合でブログを書いています。これまでの約40のブログの中でアクセス数がダントツに高いテーマがあります。それは2018年5月のマイクロアグレッションに関して説明した「無意識な発言が職場に軋轢を生む:マイクロアグレッション」です。2019年の後半からアクセス数が徐々に増えてきており、2020年末時点では「マイクロアグレッション 職場」とグーグル検索すると一番上に表示されるようになりました。

これが意味することは、2018年に投稿した時に比べ、ダイバーシティに関心を持つ人が増えてきているということが想像できます。その背景にはさまざまなことがあると思います。特に職場での多様性が高まり、マイクロアグレッションが多くのビジネスパーソンに求められる知識になったこと、また、ダイバーシティに関しての理解が深まったことによって、マイクロアグレッションについての課題を感じ始めている人が増えたことなどが考えられます。

そこで今回は、米国で提唱されているマイクロアグレッションのコンセプトを文化や環境が異なる日本の職場に当てはめて、どのように理解し活用すると、インクルーシブな職場にできるのかを考察したいと思います。

マイクロアグレッションとは
以前のブログで書いたように、マイクロアグレッションは、米国のチェスター・ピアス教授が1970年代にアフリカ系アメリカ人が他の人種から無意識で行われている日常の偏見や差別に基づいて提唱されたといわれています。その後、アフリカ系アメリカ人以外に対するマイクロアグレッションに対してもいくつかのリサーチがなされ、2000年代には、デラルド・ウィング・スー教授が再定義をし、さまざまな人種、ジェンダー(性別)、性的指向、社会階級、身分制度によって迫害されている人達に対して使われるようになりました。

マイクロアグレッションに関する論争
日本の職場をインクルーシブにするための話をする前に、もう少しマイクロアグレッションに関しての理解を深めていきます。相手が精神的・心理的に傷つく、あるいは疎外感を感じたなど、“Subtle”(微妙、さりげない)な態度や言語・非言語でのメッセージをマイクロアグレッションと説明することが多いです。しかし、このマイクロアグレッションに否定的な意見も散見されています。その一つはマイクロアグレッションを行った人が、たとえ相手を攻撃する意図がなかったとしても、それをされた相手の主観次第で傷ついてしまうことです。これは、精神的に未熟な人を増やし、社会に被害者意識の高まりを助長してしまうという意見があります。
このような意見に対して、デラルド・ウィング・スー教授は下記の3つのポイントで反論しています。

  1. マイクロアグレッションは、特定のグループに対して日常的に行われていること。そのグループの人達が生涯で数回しか経験しないことは含まれていない。マイクロアグレッションを行っている人達の例としては、「あなたの私に対するそのコメントを、私がマイクロアグレッションと感じることもできるのに、そうは感じていない。しかし、あなたが、なぜ同じようなことをマイクロアグレッションと感じてしまうほどセンシティブなのか理解できない」。このようなコメント自体がマイクロアグレッションを気にしない人たちが、気にする人たちに対しての無意識の攻撃になっている。
  2. 聞き手次第でなんでもマイクロアグレッションになってしまうと考えている人たちは、自分が発言したことが相手にどのように理解されたのかなどを考えないからだ。
  3. マイクロアグレッションのリサーチの妥当性に関しては、人種差別などを専門に研究していないと正しく理解されにくい。

他にも、マイクロアグレッションに関して気を付けるポイントとして、話しのすり替えがあります。例えば、Black Lives Matter (BLM)で「アフリカ系アメリカ人だけではなく、すべての人の命が大切だ」というようなコメントは、アフリカ系アメリカ人に対しての差別の歴史などを無視した発言になっており、マイクロアグレッションから哲学や倫理の話にすり替わってしまっています。

日本の職場で何を意識するべきなのか
このように差別の歴史とも根深く関係するマイクロアグレッションですが、日本の職場ではどのような人たちに対してマイクロアグレッションが行われているでしょうか。米国の職場と比較し、占める割合の違いはあるとしても、ここ数年で日本の職場でもさまざまな多様性を持った人材が働くようになってきています。そして、職場にいる人数の割合に関係なくマイクロアグレッションが発生している可能性があります。さらには、マイクロアグレッションと呼ぶかは別の問題ですが、日本特有の人事制度やその他の慣習からなる、米国とは異なる分類の人に対して行われている可能性があります。

多くの方が、自分の知らぬところで意図せず人を傷つける、相手に悪気がないのに自分が気分を害す・傷ついた経験はあると思います。このようなことの中には、学術的にはマイクロアグレッションに含まれないが、偏見に基づいて起きている事象の可能性があります。偏見に基づいているとマイクロアグレッションではないかと思うかもしれません。

先日、私がパーソナリティテストを受けたときに、このような例がありました。テストの結果のフィードバックをもらっているときに、「このレポートのスコアがとても高い人、または低い人は、アンコンシャスバイアスを持ちやすい傾向にあります」というコメントがありました。私のレポートのスコアがとても低く、その中でも『快楽』という項目がひときわ低くなっていました。レポートの説明はつづいて「この『快楽』の項目が低いと、本人は真面目で几帳面だが、遊ぶのが好きな人、楽しんでいる人を軽蔑する傾向があります」というフィードバックがありました。自分の過去の言動を思い出すと、確かに、自分の周囲に仕事でもプライベートでも遊ぶことを優先して物事を進めている人達に対する自分の否定的な反応を思い出しました。これが差別やマイクロアグレッションに含まれるかは不明ですが、私にその意図がなかったとしても相手の気分を害していたのは確かだと思います。私の場合は、遊びを優先して物事を進めている人に対して、そのこと自体を否定したりするのではなく、自分と異なる指向性を受け入れ、物事の優先順位や妥協案を作っていくのことが重要なんだと感じています。状況によっては、目標の達成や物事に真剣に取り組むこと以上に、遊ぶことを優先する場合があるかもしれませんが、そうすることで、本当の意味でインクルーシブな職場にしていけるのではないかと考えています。

本題の「日本の職場で何を意識するべきなのか」に戻ります。個人ができる取り組みの一つとして、自分の他者に対する言動で、意図せず相手の気分を害していたことはないか、逆に、相手が意図していないことで自分が気分を害していないか、ということに振り返ってみることです。そしてさらには、職場内で少しでもマイクロアグレッションを感じることがあれば、それを深堀りして、自分または相手のアンコンシャスバイアスが何なのかをメンバーで考えるみるもの良い機会になるのではないでしょうか。

マイクロアグレッションの対応方法
マイクロアグレッションの対応方法を調べていくと、次のような考えや方法がありました。

  • マイクロアグレッションが起きた直後に、相手の発言に対して自分がどのように感じたのかを相手に伝える
  • 時間が経ってから、改めて話す場を設定して、過去に起きたマイクロアグレッションに対して自分がどう感じたかを相手に伝える


しかし、これらの方法では相手との関係性やその場の状況などを考慮すると、個人で対応するには限度があります。特に職場では、自分がどう感じたかなどの感情を、相手にフィードバックをすることは滅多にありません。また、相手にフィードバックし謝罪されたとしても、多くの場合は傷つけたことに対する謝罪で、その人のアンコンシャスバイアスや無意識の差別・偏見まで深堀りすることはできません。

そこで一つ提案です。組織として定期的にマイクロアグレッションを感じた事象に関するアンケートなどを実施します。その結果を活用し、その事象の背景にはどのような差別・偏見があったのかを深堀りするワークショップを開催したり、深堀りした結果を社内報などで配信したりすることで、インクルーシブ環境を醸成して行けるのではないでしょうか。


本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/


筆者紹介
加藤洋平(カトウ ヨウヘイ)
クインテグラル株式会社 取締役

クインテグラルの前身であるAMAの日本支社に2008年に参加し、組織開発、グローバル人材育成、次世代リーダー育成、などさまざまな学習理論に基づき幅広いソリューションを構築、提供している。人の可能性を最大限開花させるお手伝いをすることをミッションとし、日々の業務と継続的な学習をおこなう。

 


 

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