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定説を疑ってみる 「最新」「計画」「数値化」の限界

定説を疑ってみる 「最新」「計画」「数値化」の限界

「変化するもの」にとらわれる

私たちは大きな変化の時代に生きています。そのスピードは加速度的に増し、私たちは変化のスピードに適応し、対応しなければなりません。そのためには、最新の考え方やツールを学ぶ必要があります。あえて、これらを「定説」と呼びます。

さまざまな講演、セミナー、研修、あらゆるメディアで同様なことを目にしたり、耳にしたりします。その通りのこともありますが、多くのことは当てはまらないと私は考えます。私たちは「変化するもの」を見ているから、そう感じます。動いているものや変化しているものに目はとらわれがちです。私たちの思考や考えも同じように影響を受けます。

駅のホームに立っていることを想像してください。猛スピードで到着する電車に私たちの目は集中します。しかし、同時にそこには静かに電車を待つ人が立っており、ホームには椅子や看板、掲示板が前と何も変わらず、そこにあります。猛スピードの電車ばかりにとらわれていると、変わらない、静かな存在を忘れてしまいます。

今回のブログではいくつかの定説を疑ってみます。

最新の限界

先日、米国ミシガン州にある会社の2人のマネージャー、そしてメキシコシティの会社のマネージャーとミーティングを持つことができました。彼らがマネージャーとして日々大切にしていることを伺うと、驚くことに3人とも同じ回答が返ってきました。

一つ目はGet the right things done (正しいことを成す) ということ、二つ目は部下が仕事をしやすい環境を作るということでした。私は何か新しいマネジメント手法や斬新なアイデアなどを知りたいという期待があったので、正直、少し拍子抜けしました。しかし、彼らと話しをしていると次第に納得できました。

マネージャーが対処する課題は時代とともに変わってきましたが、マネジメント手法は今も昔も変わっていません。私たちは変化しているものしか目に入らないのですが、ほとんどのものは昔と変わっていません。私たちは人と協力して仕事し、目標に向かっています。ひとりだけで完遂する仕事はあまりありません。そして、1,000年前も100年前も、そして今も仕事を成す人間の中身は変わっていません。時代劇や昔の映画、歴史小説などを見ても、人の悩むことに変わりがないことが分かります。

アドラーは「全ての悩みは対人関係にある」といいましたが、その通りだと思います。この対人関係の悩みに関して、何千年もの間、人は悩み、時には苦しみ、模索しているのです。

あまり「最新」神話を追い求めることに執着しない方が良いかもしれません。「最新」やトレンドに偏重し過ぎると弊害を起こすことがあります。どのようなことが起きようとも、固く立ち、変化に流されず、しっかりとした基盤や軸を持っていたいものです。

計画の限界

私たちビジネスパーソンは仕事を始める前に「計画」を作成することが求められます。戦略やアクションプラン、ビジネスストーリー、プランニング、予算、段取り、さまざまなスタイルの計画です。何事も場当たり的にものごとを進めるよりは、あらかじめ計画を作成した方が良いという定説があります。

しかしながら、現実はどうでしょう。私は今までの社会人生活で計画通りに行ったことはありません。必ず何かが起こり、計画通りに機能したためしがありません。私の場合、計画通りに運ばない確率は実に100%であり、必ず何かしら起きます。それが人生なのだと楽しんでいます。

また、マネージャーの立場からすると、立案した計画通りに動いてくれるメンバーはほぼ皆無でしょう。それなのに、なぜ人は計画を立案し、自らとメンバーにそれを期待するのでしょうか。

計画通りに行かないからといって、立案する必要はないということではありません。うまくいかないのは、現場から離れた「机」の上や「頭」の中だけで計画が練られ、サイエンスのようになってしまっているからだと考えます。

私たちが現場で発見したり、見いだしたりしたパターンや成功例、取り組みが計画に反映されると中身のある計画に変化します。いわゆるクラフトの要素が必要です。自分自身のオリジナルである「ひとさじ」を入れ、計画に魂を注入します。他者から与えられるよりも、自ら作り出した計画には愛着もあるし、具体的なイメージも湧きやすくなります。自分自身の計画なのでコミットメントを作り出すことが期待できます。一度、皆さまの組織でも試してみてはいかがでしょうか。

数値化の限界

ものごとを判断するには、主観に頼らず、数値やデータで客観的に判断します。一見もっともで、正しく聞こえる定説です。しかし、人の主観を軽視し過ぎると弊害を生む場合があります。主観は自分自身の中から発せられるものですから、考えたり、感じたりすることから始まります。反対に客観的な数値やデータは、それ自体に判断価値がありますから、人の考えや感情は必要なくなってしまいます。つまり、数値に頼り過ぎてしまうと、自分の頭で考えたり、判断できなくなったりしてしまう可能性があります。

一つの事例を紹介します。私たちは研修を開発し、企業、団体、組織に提供しています。顧客との企画段階で研修プログラムの結果を数字で示してほしいとリクエストを受ける場合があります。知識インプット型の研修の場合は、それが可能です。研修前後でテストをすれば、その人の理解度を測ることができます。

しかし、顧客によっては、マネジメント、リーダーシップ、コミュニケーション研修の場合でも同様に効果を数値化でレポートしてくださいと求められることがあります。数値化が非常に難しいため、お断りしています。

マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授も自身が作ったマネージャー向けの研修プログラムに対して同じようにリクエストされたことがあったそうです。ミンツバーグ氏はその顧客に「最近読んだ本を思い浮かべ、読むためにかかったコストを出してください」と聞いたそうです。そうすると購入した費用と、読むのにかかった時間を顧客は答えてくれました。

ミンツバーグ氏は「なるほど。それでは、その読書の効用を数字で言えますか?その本から受けた影響を数字で示せれば教えてください。私も同じようにこのマネージャー向けの研修プログラムについて同じことをやってみますから」と回答したとのことです。 (私はそこまで顧客に対して言えませんが。)

数値化したり、測定したりできるものはどんどん測定すれば良いと思いますが、限界もあります。成果を数値化できないからといって、マネジメント研修に効果がないとは言えません。研修後のマネージャー自身の行動を観察し、顧客自身がしっかりと考え、評価することが重要です。数値化の限界を知り、思考停止にならないように私たちは注意を払う必要があるのではないでしょうか。

最後に

「成功できる人というのは、『思い通りにいかない事が起きるのは当たり前』という前提をもって挑戦している。」
トーマス・エジソン

 

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(Mikihiko NISSATO)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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