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しゃーないミニバンの車内から、ダイバーシティ

しゃーないミニバンの車内から、ダイバーシティ

旧友との再会

先日、今は米国中西部で暮らしている学生時代の友人が、子供の夏休みに合わせて一時帰国するということで、友人たちと久々に会う機会があった。コロナ禍を挟み、旧友との再会はとても貴重で楽しいものだった。

友人は、どうやら小学生の息子を故郷の小学校に短期留学させるのが目的だったようだ。私は、そのような制度を初めて知った。留学する本人も、受け入れ先の小学校の児童たちにとっても非常に良い経験になるのだろうと人ごとながら嬉しく感じた。

学生時代の友人同士のたわいもない話の中で、お互いに今はどんな車に乗っているのかという話題になった。「子供がいるとミニバン、特にスライドドアは便利で助かる」という何気ない会話をしていた。パパママの会話としては極々当たり前の主張と内容、おそらく否定されずに流される内容と思っていた。カーリングをやっていようと、やってなかろうと、「そだねー」で済む内容だと思っていたが、事態はそう簡単には流れなかった。

「私は絶対にミニバンには乗らない!」と一時帰国の友人が言い放ったのだ。

ミニバンには乗らない理由を妄想

「な、なーーーにーーーー?やっちまったなぁーーー」と思わず、私は心の中で叫んでいた。小学生の息子がいて、米国の車文化で生活している彼女であれば、間違いなく共感されるだろうと思った何気ない一言が、こうもあっさりと否定されるとは、思ってもみなかった。

もしや米国ではもう電気自動車が浸透し過ぎて、比較的車体が大きく動かすのにパワー (トルク) が必要な車は敬遠され、もう子育て世代に支持されていないということになっているのか。でも確か、彼女一家が住んでいるのは、中西部の大都市近郊の郊外だから、大きい車体が邪魔ということはないはずだ。ミニバンは絶対に便利なはずである。

日本のように道幅や駐車場の間隔が狭くないため、スライドドアの利便性をあまり感じないかもしれない。でも、ミニバンが便利なのに変わりはなく、日本よりも家族で長距離ドライブの機会も多いはずだから、スペースの広いゆったりした車体は便利だ。なのになぜ、ミニバンには乗らないのか。

もしや彼女は「走り屋」なのか。車高の低い、地をはうような視界で高速で瞬時に後ろに流れる景色と、絶妙なハンドル裁きを楽しんでいるのか。いやいやまて、彼女の住む中西部は大平原でそもそも山のようなものはなく、攻めたくなるような峠など皆無なはず。そんなだだっ広い平面の大地で、どこをどう攻めているのか。あぁぁ、そうか、別に峠を攻めたいとわけではないのかもしれない。

ひょっととすると、高級セダンのようなゆったりしたものを求めているのか。ひと昔前、陸のヨットとやゆされるようなビロンビロンの柔らかいサスペンションで、フルサイズのボディーにV8エンジンを積んで、まるで波の上を走っているようなラグジュアリーなアメ車をご所望なのか。いやいや、さすがに時代を逆行するような燃費の悪さから、今さらそれはないだろう。そんなものは、もう90年代でほぼほぼ消滅しているはずだ。

では、あれか、アメリカであれだけ食されているのにフレンチフライと呼ばれるフライドポテト・・・ではなくて、ジャーマンポテト!あ、ポテトの話ではなく、ジャーマンカー、つまりドイツ車好きなのか。などといろいろと頭の中で妄想が駆け巡る。

私の記憶が正しければ、ミニバン自体が米国発祥の車種であり文化である。日本でこれほどミニバンがはやる以前から、米国ではたくさんの車種のミニバンがあり、ファミリーカーの定番として愛されているはずだ。米国在住のAMA講師が、研修の中で「日本車の中でもホンダのオデッセイーが結構人気」と言っていたのを少し前に聞いたことがある。

そんな米国で暮らす「ファミリー」の彼女が、なぜミニバンに乗らないのか?ちょっとした謎だ。何か理由があるに違いない。私自身が最近ミニバンに変えたばかりで、家族からは大好評なので余計に理解ができなかった。

わが家では好評なミニバン

わが家でミニバンが好評な一番の理由は、後部座席に小さなモニターがついていて、子供達がそこで好きなDVDを見ることができる点だ。もちろん、車内スペースに多少の余裕がありゆったり過ごせることや、隣の車との距離があまりない狭い駐車場でも、子供のドアの開け閉めで他の車にぶつける心配もないことも好評の理由だ。少しだけ座高の高い運転席で、運転する時の視界も高く、安全運転する分には申し分のない運転のしやすさだ。

わが家のミニバン車内では、おおむね22世紀のネコ型ロボットのアニメ (特に映画版) か、見た目は子供、頭脳は大人の小学一年生の少年が、「真実はいつも一つと」と言いながら、麻酔銃で人を眠らせて殺人事件の犯人を言い当てるアニメが流れていることが多い。

見た目はおじさん、頭脳もおじさんの訓練

私自身は運転をしているので、画面は見えない。ただ、赤信号などで車が停車する時だけ、運転席から見える画面 (普段はナビゲーション画面) にもアニメが映る仕様になっている。ほとんど音声だけでストーリーを追っていくことになる。音声だけで殺人事件のいきさつを説明される状況を数多く経験しているからなのか、傾聴し、頭の中でイメージを組み立てて、論理的に構造化させるということがどんどん得意になってきている気がする。まぁ、見た目はおじさん、頭脳もおじさんなので、当たり前ではある。毎日車を運転しながら訓練されているからかもしれない。

何事もスキルアップには役立つものだと申しておきたい。ただ一つだけどうしても難しいなと感じていることは、映像で見ているわけではないので、記憶に残りにくいということだ。車外で同じストーリーを見ていても、一度聞いたことがあるストーリーだと気づくまでに時間がかかる。ストーリーがかなり進んでから「あっ、これ知っている話だ!」となるので、自分も驚くが、周囲も驚く。これは普段アニメを音だけで聞いているからか、ただの老化現象なのかは、解けないミステリーである。おおむね他者は老化現象と判断するので、何となく損をした気分になってしまう。

お笑いのネタからの気づき

さて、最近はネコ型ロボットも大人な頭脳の少年もリピートし過ぎてしまい、少し飽きてしまった。わが家のミニバンの車内では、漫才の賞レースであるM-1グランプリの過去大会のDVDが流れるようになった。これは子供達の要望というよりは、妻と私の嗜好 (しこう) である。

2001年から10回大会までのDVDを聞いていて気づいたことがある。今なら、コンプライアンス的に問題だなと思う表現が、漫才ネタやお笑いのネタとして多い。具体的には書かないが、性的志向性の違いをバカにするような表現や、男らしさ・女らしさを強調して、ズレが生じていることを笑いのネタにしていた。そんなに大昔のネタではないのに、今聞くとこうも気になってしまうのかと、ある種の発見でもあった。

私たち日本社会も、そこそこ変わってきているんだなと実感できる。今のテレビで放送されるお笑いのネタで、気になるようなことは、少なくなっている。お笑いの世界に携わる人たちの意識、そして受け手側の私たちも徐々にではあるが、多様性を受け入れる素地というのが、確実に一歩一歩蓄積されていると感じることができた。まぁ音声のみの確認ではありますが、過去のお笑いネタから新しい気づきを得ることができた。ぜひ、皆さんも古いお笑いネタで社会の変化を確認してみてください。

ミニバンには乗らない理由

ところで、ミニバンには乗らないという私の友人は、日本車のSUVに乗っているらしい。北米では特に人気の高い群馬県発祥のメーカーで、私も大好きなメーカーである。そこそこ車高も高い車種なので、ミニバンでも良いではないかと思ったのだが、どうやらミニバンの社会的なイメージがあり、それを避けているとのこと。Soccer Momという言葉をご存じだろうか。私は全く知らなかったのだが、Wikipediaによると次のように書かれていた。

サッカーマム(Soccer mom)とは、アメリカで子供にサッカーを習わせる教育熱心なアッパーミドル階級の母親。多くはリベラル層、大卒、白人、郊外在住の「サバーバン・マム(suburban moms)」とも重なる。
サッカーマムが子供の送迎に利便性の高いミニバンを使うことから、ミニバンのユーザーの代名詞としても使われている。

ミニバンに乗っている母親のイメージがある程度固定化されているようで、そのような人と見られるのが嫌だという理由であった。「そんなことか!」と思う反面、米国社会でマイノリーとして生活する友人の気苦労や生活の知恵からなのか、いろいろな偏見や差別、バイアスなどにさらされているため、周囲からの見られ方や、カテゴライズされることなどに敏感にならざるを得ないことなのだろうと、独り勝手に納得した。

もちろん、カテゴライズされないようにするということは、カテゴライズしているということである。それがバイアスや差別などの原因の一つになり得ることでもあるが、ミニバンに乗らないということは誰も傷つけるわけではない。いろいろと1人妄想しまくった私が、少し疲れたという「しゃーない」ミニバンの車内での気づきでした。

 

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筆者紹介

山田 琢 Taku Yamada
クインテグラル株式会社

グローバルな仕事に従事しながら、国および企業文化の違いによる組織力の差に興味を持つ。それ以来、より良い組織を作るにはどうしたら良いのか、そもそも良い組織とは何かを探し求め、組織開発ファシリテーター・コンサルタント、企業内人事などに従事し、2018年より現職。人材育成の領域から、より良い組織作りに貢献することを目指している。


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