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シニア世代が生き生きと働くための鍵とは?

はじめに

先日のある新聞の世論調査において、70歳以降も働くと回答した人が最多にも関わらず、長く働くための技能向上に関しては、関心が低い結果だったそうです。私はとても残念に感じました。そこで、今回のブログは、私自身と同じシニア世代の方々の働き方や自らの未来の切り開き方のヒントになればという思いで書きます。

働かないおじさん・おばさん

現代の日本社会では、シニア世代の労働者に対する見方が変化しています。「働かないおじさん・おばさん」や「弱体化するミドル・シニア」といった否定的なラベリングが散見され、同世代の私としては腹立たしい限りです。これは本当でしょうか。私はそうは思いません。49歳から50歳の誕生日を迎えた途端に、あるいは55歳になったと同時に、その人の能力がガクンと落ちてしまうものでしょうか。そんなばかげたことが起きるはずはありません。多くの企業や人事制度を考える人は、多くのシニア労働者が持つ潜在的な価値や能力を見過ごしているのではないでしょうか。

50歳を超えると、役職定年、出向、メインストリームからの外れ、給与の減額など、シニア労働者にとって不利な制度が日本の多くの企業に存在します。これらの制度は、企業側の決定によるものであり、シニア労働者自身の選択ではありません。このような状況は、シニア世代の人々の不公平感や不満、そして仕事への意欲の減退を引き起こしていると言えるでしょう。もしかすると、不公平な制度自体が「働かないおじさん・おばさん」や「弱体化するミドル・シニア」を生み出しているのではないでしょうか。しかしながら、日本には「長いものには巻かれろ」という社会的風潮があり、これまでの制度に従わざるを得ないのがシニア労働者の現状です。

一方で、日本は少子化の影響で生産人口が減少しており、シニア世代の労働力はこれまで以上に重要になっています。彼らのキャリアの延長が必要とされています。中には定年制度の撤廃を表明する企業や、定年の年齢を引き上げる企業も出てきています。しかしながら、多くの場合、シニア世代は好ましくない制度に屈服せざるを得なく、労働条件は必ずしも良好ではありません。それならば、シニア世代ができる範囲で、彼らが生き生きとしたキャリアを築くためには、どうしたら良いのでしょうか。

ジョブ・クラフティング

ここで注目されるのが「ジョブ・クラフティング」という概念です。ジョブ・クラフティングとは、自らの仕事の範囲やタスク、対人関係を自分で調整し、自身の能力や興味に合わせて仕事を再設計することを指します。このプロセスを通じて、労働者は自分の仕事に対する意義や満足感を高めることができるといわれています。

クラフト (craft) は、耳慣れない言葉はですが、クラフトビアとかクラフトコーラならば、最近よく耳にされる方も多いでしょう。また、クラフトマン (craftsman) は職人、クラフトは職人技といった意味があります。ジョブ・クラフティングには、職人がやるように手作り感をもって仕事をするというイメージが込められています。

東京都立大学の高尾教授によると、「自分のひと匙を入れ、自分の持ち味を活かすことで、働きがいを自ら高めることができれば、それは試してみる価値があるように思います。こうした自分起点の仕事への働きかけがジョブ・クラフティング」だそうです。

労働心理学と組織行動学の分野で活躍するオランダのティルブルフ大学のDorien Kooij教授という学者がいます。彼女は年齢と仕事の関係、キャリア開発、モチベーション理論、そして従業員のウェルビーイングに関する研究で知られています。Kooij教授の研究によれば、ジョブ・クラフティングは人と仕事の適合性、エンゲージメント、エンプロイアビリティ、パフォーマンスなど、多くの重要な職務成果にプラスの効果をもたらすと証明しています。シニア労働者がジョブ・クラフティングを行うことで、彼らは自らのキャリアを充実させ、より活躍する可能性があります。

ジョブ・クラフティングの利点は多岐にわたります。第一に、労働者は自分自身の強みや興味を生かして仕事を再構築することができるため、より充実した職業生活を送ることが可能になります。第二に、仕事の意義を自分自身で見いだすことができるため、エンゲージメントやモチベーションが向上します。最後に、自分自身でキャリアを形成することで、未来に対する不安を減らし、エンプロイアビリティを高めることができます。

ジョブ・クラフティングは、シニア世代だけでなく、すべての労働者にとって有益な概念です。それは、個々の人が自らの仕事との関わり方を再考し、より意義深く、満足のいくキャリアを築くための手段を提供するものです。シニア世代の労働者が自らの経験と知識を生かし、新たなキャリアの可能性を探求することは、彼ら自身だけでなく、社会全体にとっても大きな価値を持ちます。

最後に

シニア世代の職務満足を得るためには、ジョブ・クラフティングが重要な鍵です。自分自身の仕事を積極的に形成し、調整することで、シニア労働者は自らのキャリアをより充実させ、社会における役割を果たし続けることができるのです。このような取り組みが、シニア世代の労働者にとっての新たな可能性を開くことになるでしょう。そのためには能力・技能向上は必須です。リスキリングやアップスキルなどに取り組み、向上心を持って、私も励みたいと思います。

企業もまた、シニア世代の労働者が自身のキャリアを形成し、発展させることを支援する制度や環境を整備することが求められます。これには、ジョブ・クラフティングの概念を職場文化に取り入れ、労働者が自らの仕事をカスタマイズしやすいようなフレームワークを提供することが含まれます。また、継続的な学習やスキルアップの機会を提供することも、シニア世代の労働者が市場価値を維持し、職業人生を充実させる上で重要です。

シニア世代の労働者に対して「働かないおじさん・おばさん」や「弱体化するミドル・シニア」など恥ずべきレッテルを貼られていますが、名誉挽回を目指し、かけがえのない存在になるべく、共に努力して参りましょう!私が伝えたかったのは、これに尽きます。

 

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お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

新里 幹彦 A guide to future

新里 幹彦(Mikihiko NISSATO)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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