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「心理的安全性(Psychological Safety)」を高める (3)

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生産性とイノベーションとの関係性
心理的安全性を取り上げるのは今回で3回目になります。まだまだお伝えしていないことがあります。今回はさまざまなデータを通して、掘り下げていきます。是非、最後までお付き合いください。

アメリカのリモートワーク導入結果 (AMAの最新ホワイトペーパー)
先日、AMAから発表されたホワイトペーパー「不確実な環境における人材の変化 -2020年のパンデミックが引き起こした内発的動機づけ-」のデータを見て、とても驚きました。日本同様、アメリカでも新型コロナの影響で多くの企業ではテレワークを導入しており、以下のような結果が発表されました。

■柔軟性・生産性

■創造力やイノベーションに与えた影響

私は、アメリカにおいてもリモートワークにより仕事がやりにくくなり、コミュニケーション不足が生じ生産性が落ちて、イノベーションなどは生まれないといった悪影響ばかりを想像していました。しかし、驚くことに結果はその反対でした。むしろ、チームワークには全く影響がなく、かえってコミュニケーションがより慎重になり、その結果、改善された点もあるようです。イノベーションを生み出すには、直接人と人の出会いによって成されるものという前提がありましたが、意図的な書面 (emailやテキスト) 、電話、バーチャルミーティングなどのコミュニケーションを通して、創造性が高まったことが分かりました。メンバーが同じ場所で仕事をしていない状態では成果を上げることは難しいという心配・懸念は払しょくされました。それでは、私たちの日本はどうなのでしょうか?

日本のリモートワーク導入結果
前述のAMAと同じ指標・質問で導き出されたデータではないので、一概に比較はできませんが、以下のようなことが分かっています。

■テレワークにおける不安感・孤独感

データ出所:パーソル総合研究所 テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査より

新型コロナの影響でテレワークをしている人に質問しました。約25%のテレワークをしている人が仲間がいない、30%以上の人が孤立感を感じているという、とてもショッキングなデータです。このような状態で仕事がはかどるのでしょうか?仲間を信頼して、生産性を上げ、新しいことにチャレンジしたりしてイノベーションを生み出すことはできるのでしょうか?残念ながら、私はそうは思いません。

さらに、2020年5月のレノボの調査結果によると、世界10ヵ国 (日本、米国、ブラジル、メキシコ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、中国、インド) 中で、「在宅勤務での生産性は、オフィスで勤務するより下がる」と回答した割合が高かったのは、日本の40%でした。アメリカが11%、全体平均が13%なので、日本が在宅勤務について否定的な感情を持っている結果となっており、残念でなりません。

心理的安全性が絶対条件
職場・会社が好きで、愛着が増すと安心が生まれます。これが心理的安全性です。私もここにいて良いんだ、安心して仕事ができると思えることで、仕事がはかどり、生産性が高まります。段々と失敗を恐れずに、新しいことにもチャレンジするようになり、結果、イノベーションが生まれます。そして、そういった職場には活気が高まり、退職者は減り、この職場で長く働きたいとエンゲージメントが高まります。以前のブログでも述べましたが、Engagement (エンゲージメント) は結婚の約束を交わす際の「婚約」から発しています。転じて、社員がその企業・組織にどれくらい愛着を持っているかといった、社員と企業との距離感を表す言葉として用いられるようになりました。生産性とイノベーション、そしてエンゲージメントを生み出す絶対的条件が心理的安全性なのです。逆の言い方をすれば、心理的安全性がないところには、生産性・イノベーション・エンゲージメントは決して生まれないのです。

アメリカ人から学ぶNever Give Up!
AMAのホワイトペーパーには、次のようなデータもあります。皆さんに紹介したいデータです。

■自己管理能力の向上

アメリカでリモートワークをしている多くの人たちは今回のパンデミックをマイナスとして捉えていません。むしろネガティブと思えるような機会を自らの成長の絶好の機会として捉えていることが分かります。パンデミックという外発的動機で、ある意味「やられて」しまうのではないかという危惧をよそに、アメリカの人々はより強い内発的動機で行動するマインドと術を身につけていたのです。まさしくNever Give Up!の精神です。これは本当に驚くべきことで、尊敬に値します。私たち日本人にとって励まされる事実です。私たちもパンデミックを好機・チャンスに変えることができるのです。

内発的動機とは?
人間はアメ (報酬、インセンティブ、昇進・昇格など) やムチ (減給、降格、罰など) でモチベーションを上げることはできない、尊厳のある存在なのです。このことは科学的データでもはっきりと明確に証明されています。アル・ゴア元アメリカ副大統領のメインスピーチライターであり、「モチベーション3.0」の著者であるダニエル・ピンクの動画「やる気に関する驚きの科学」を見ていただきたいと思います。彼はアメやムチで人は動かないこと、内発的動機で人は高いパフォーマンスを発揮することを述べています。内発的動機には3つあります。
1. 自主性 (Autonomy):自分の人生、やり方は自分で決めたいという欲求
2. 成長 (Growth):何か大切なことに対して、上達したいという欲求
3. 目的 (Purpose):自分だけでなく、より大きな何かのためにやりたいという欲求

これらの3つの内発的動機を大切にすることで、人は心理的安全性を高めることができ、結果、生産性・イノベーション・エンゲージメントを高めることに繋がると私は強く信じています。事実、AMAの上記データでもそのことを示しています。自発的にやりたい、上達したい、より大きな何かのためにやりたいという内側から溢れ出てく欲求を抑え切れなかったのでしょう。職場の人全員 (役職者・メンバー含む) がそれぞれの内発的動機を思いやり、そして気遣いを持ってみる、表現することで、心理的安全性を高めることができるでしょう。

最後に:アルフレッド・アドラーの言葉
職場があること、お仕事があること、そして仲間がいること感謝ですね。
締め括りは、アドラー心理学のアドラーの言葉です。
『「よくできたね」と褒めるのではなく、「ありがとう、助かったよ」と感謝を伝える』

AMAのホワイトペーパー「不確実な環境における人材の変化 -2020年のパンデミックが引き起こした内発的動機づけ-」は以下よりダウンロードできます。
https://www.quintegral.co.jp/docs/

心理的安全性に関するこれまでのブログは以下よりお読みいただけます。

2020年03月19日
「心理的安全性 (Psychological Safety) 」を高める (1)

2020年04月19日
「心理的安全性 (Psychological Safety) 」を高める (2)

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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