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「心理的安全性(Psychological Safety)」を高める (1) 
コロナ禍での働き方 リモートワーク(テレワーク)に必要な環境

Psychological_Safety

 

心理的安全性(Psychological Safety)とは?

前回の私のブログではエンゲージメントについて取り上げました。Engagement(エンゲージメント)はHRの中で頻繁に使われる言葉です。結婚の約束を交わす際の「婚約」から発していますが、転じて、社員がその企業・組織にどれくらい愛着を持っているかといった、社員と企業との距離感を表す言葉として用いられるようになったと述べました。今回はエンゲージメントを作りだす「心理的安全性(Psychological Safety)」について、皆さんと考えていきたいと思います。

次のような率直な意見、リクエスト、質問を皆さんの職場で交わすことができますか? Yesと自信を持って回答できる方は心理的安全性のある職場に属していると言えるかもしれません。

「私、それ変だと思います」
「○○できなくて困っています。助けてくれますか?」
「とりあえず、やってみよう。(やってみてくれますか?)」
「その意見、考えたことがないけれど、斬新で良いね」

このような会話を交わすことは自然にできそうに感じますが、案外実行するのは難しいようです。今はコロナ禍、リモートワーク(テレワーク)が多くの企業で導入されていますが、コミュニケーションを取りたい時に取れない状況下では、このような会話を交わすハードルが高くなってしまいました。もしかすると、このような会話が交わすことができない場合、皆さんの職場の心理的安全性は低くなっているかも知れません。

ハーバード大学のエドモントン教授は論文の中で、こう述べています。

“A shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking.”

「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だということがチームメンバーに共有される信念のこと」と定義しました。つまり、心理的安全が保たれているということは、恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指しています。

また、重要なポイントとして、ここで言う「チーム」とは「グループ」と区別する必要があるということです。例えば、チケット販売窓口に並んでいる集団を「チーム」とは呼びません。この場合は、単に並んでいるだけでお互い知らない同士の集団ですので「グループ」です。「チーム」は共に同じ目標やゴールに向かっていく組織です。ゴールに向かって活動していく過程で集合体の単なる「グループ」が「チーム」に変化していく、そのような意味合いがあります。リモートワークが導入される前に既に自組織が「チーム」になっていたのであれば、インフラやIT環境を整えることでコミュニケーション上の課題を解決することができます。しかし、単なる「グループ」のままの未成熟の状態でリモートワークに突入したのだったら、インフラ・IT環境の整備だけでは解決しません。よりハードルは高くなります。リモート環境の中で「グループ」を「チーム」に発展させるチームビルディングをしていく努力が必要になってきます。

心理的安全性が低い(無い)状態とは?

心理的安全性が低いもしくは無い状態とは、上記の定義の反対の状態を考えれば分かりやすいです。リスクなんて取ることができない、恐怖や不安を感じる、他の人の目が気になってしまい、積極的な意見や行動なんてできない、そのような状態です。エドモントン教授はそれらを以下の4つに分類し、リスクとして整理しています。

  1. 「無知」だと思われたくない
      弊害:自分・自組織・お客様にとって有益だと思っても、質問・相談・提案をしない
  2. 「無能」だと思われたくない
      弊害:自分の意見を言わなかったり、ミスを隠したりする
  3. 「邪魔」だと思われたくない
      弊害:分からないのに質問をしない、必要なのに助けを求めず、不十分な質で妥協する
  4. 「否定的」だと思われたくない
      弊害:空気が壊れる、評価が気になる、嫌われたくないという思いから、率直な意見を言わない

数多くのミーティング・商談に出席した私の経験上、上記のような状態・傾向は、上意下達で官僚的な組織やカリスマ的・支配的なリーダーのいる組織に見られると思われます。「The日本株式会社」のような日本の大手企業だけではなく、外資系企業にも散見されます。明らかに的を外している意見、社会通念上逸脱している意見を言っている上司やメンバーがいても、ミーティング中、(表情からして明らかに反対の気持ちがあるのに)一切意見を言わないメンバー・部下、貝のように口を閉ざしている方々に何度もお会いしました。人は誰でも良い評価を得たいですし、罰を受けたくない、悪い評価を下されたくありません。また意見を言うことで、あとで叱責されることは避けたいと思うのは仕方がありません。これは個人が非難されるべきことではなく、心理的安全性の低い状態を野放しにしている組織自体に問題があると言わざるを得ません。過去の経済事件、汚職、隠蔽事件の影には、このようなネガティブな組織文化が背景として存在していたことが後の報道で分かっています。心理的安全性が低いことは大きなリスクに繋がると言えます。

心理的安全性が高い組織とは?

2012年Google内で立ち上がったプロジェクト・アリストテレスでは「効果的なチームはどのようなチームか?」について調査しました。誰がメンバーであるか、どんな優秀なメンバーがいるかということは重要ではなかったとのことです。1990年代に書かれた「ビジョナリーカンパニー」では誰とバスに乗るかが重要だと言っていましたが、Googleでは違う結果が分かりました。それよりも、どのような協力・コラボレーションをしているかが重要であることが分かったのです。その中でも圧倒的に「心理的安全性」が重要であり、それが確保されているチームは離職率が低く、エンゲージメントも高く、収益性が高いと結論づけています。米国組織行動学会や他のリサーチでも、Googleと同じような結果が以下の通り発表されています。

  • 業績向上に寄与する
  • イノベーションやプロセス改善が起きやすくなる
  • 意思決定の質が高くなる
  • 情報や知識が共有されやすくなる
  • チームの学習が促進される

心理的安全性が低い状態のコンフリクトは、人間関係(人の好き嫌い)や仕事のプロセス(仕事の管轄:私の仕事、あなたの仕事)に悪影響を与えます。反対に、心理的安全性が高い状況下では、コンフリクトはむしろ歓迎すべきものなのです。自由闊達な意見が交換されるため、肯定的で、健全なヘルシーコンフリクトがタスク上に起きます。同じ問題・事実に対して、私はこう思う、あなたはそう思うと意見をぶつけ合うことができるようになり、結果、業績に良い影響を与えます。

エドモントン教授が言っている「無知・無能・邪魔・否定的」な状態が無いことに焦点を当て、改善するやり方もひとつの方法です。また、以下に挙げる3つの因子にアプローチすることで、「心理的安全性」が高まることも分かってきています。

  1. 話しやすさ
    「何を言っても大丈夫」という環境。皆が同じ方向を向いているので、問題・リスクを感じた場合でも反対意見を言うことができる。また理解できないことがあれば、恥ずかしがらずに質問することもできる。
  2. 助け合い
    トラブルや課題に直面しても、相互で相談・支援・協力することができる。自分だけの責任範囲だけではなく、共有のゴールに向かって共に達成しようという姿勢が見られる。
  3. 挑戦
    時代の変化に合わせて新しいことを模索しよう、または変えるべきことは変えようというマインドセット。正解が無い中でも、試行錯誤し、チャレンジすること自体に価値があることを知っている状態。多様な観点からのアイデア・意見を歓迎する。

心理的安全性が高まってくるとさまざまな効果が得られます。代表的な例をいくつか説明します。

  • 話しやすい状態にあるため、情報交換が活発になり、職場・チームが活性されます。また、コミュニケーションが円滑なため、問題発見と解決がスピーディーになります。
  • 助け合いが起きる職場・チームは安心が高まり、良い意味での居心地が良いので、愛社精神や仲間意識が生まれ、人材の定着率・エンゲージメントが高まります。
  • 多様な意見やアイデアが発言され、チャレンジする風土があるので、イノベーションが起きやすくなります。

心理的安全性が高まることで多くの副産物が生まれることは当然かもしれません。しかし、コロナ禍で働き方やさまざまな構造変化が起きている中では簡単には行きません。意図的に、組織のメンバー総動員で心理的安全性を創り出すことが必要です。信頼は一朝一夕で創り出せるものではなく、努力と時間をかける必要があります。そして信頼はたった一言で崩れ去り、心理的安全性は揺らいでしまうものなのです。

心理的安全性を高める方法は、続編で

このブログを書いている過程で、これは1回では書ききれないと思いました。「心理的安全性」は非常に深いテーマです。次回も同じテーマを深堀りしていきます。心理的安全性を高める方法について、より具体的に詳しく書いていきたいと思いますので、是非期待していてください。

 

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筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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