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Withコロナで必要なマインド・スキル
(2) 未来への道標   A guide to future

Scenario_planning

前回のブログでは「戦略的洞察(Strategic Foresight)」について紹介しました。今回は、シナリオプランニングについて詳しく紹介していきます。 戦略的洞察ツールには、シナリオプランニングの他にもフォアキャスティング、バックキャスティング、コンティンジェンシープランニング、クライシスシミュレーション、ホライズンスキャニング、ウォーゲームなどがあります。

 

シナリオプランニングとは

シナリオプランニングは、複数の未来を描くことで、それらに「備える」、そして「行動する」ことを支援するのに特徴があると前回述べました。それは未来を予測するものではありません。過去から現在までに累積した情報や数学的な類推でもありません。ましてやExcel上で変数を少し増減しただけの予測モデルでもありません。 2000年以上前の共和政ローマ時代の政治家であり哲学者のキケロは、従来型の考え方にこだわることを「現在の呪縛」と呼びました。またAMAの終身顧問であったピーター・ドラッガー博士は「現在の延長線上に未来を予測することは、夜に後ろを見ながら車を運転するようなものだ。」とも言いました。つまり、明日は今日の変化形でしかないという考え方は、ある意味危険だと言っているのです。

シナリオプランニングでは現代の世の中は変化に満ちているのが当たり前で、「未来がどうなるか」よりも、「未来がどうなりうるか」と想像することの方が重要だという考え方です。シナリオプランニングで、様々な未来のシナリオの組み合わせ(ポートフォリオ)を考え、各々のシナリオに対して柔軟な戦略を練ることが出来るようになります。例えば、市場と環境要因を組み合わせた未来の全体像をイメージすることが出来るようになってきます。競争環境が自分たちに不利な方向に大きく変わることを想像できないと失敗してしまいます。前回実例を挙げたスイス航空のように破綻してしまうことになってしまうかも知れません。

 

シナリオプランニングのプロセス

それでは、実際にはシナリオプランニングはどのように具体的に作り上げていくのかを紹介していきます。代表的なものは以下の6つのプロセスになります。

  1. 課題を設定する
  2. 情報収集をする
  3. ドライビングフォース(原動力)を特定する
  4. 未来を左右する分かれ道になるような要因を見つける
  5. シナリオを考える
  6. 骨組みに肉付けし、複数のストーリーを描く

これらのプロセスを通して、複数のシナリオが出来れば、それぞれに対して、より良い戦略を策定することが可能になってきます。戦略が出来れば、あとは組織の中で心構えや備えをしていけば良いわけです。前回のブログで紹介した石油大手のロイヤル・ダッチ・シェル社は未来シナリオをいくつか作成し、それらに備えていたためにオイルショックにいち早く対応することが出来たと紹介しました。このように、シナリオプランニングを行えば、不測の事態が起きても、大きく動じる必要がありません。

 

ドライビングフォースからシナリオ作成

シナリオプランニングの肝は、自組織に影響を与える様々なドライビングフォース(原動力)の中から2つ選び出すことです。ドライビングフォースとは未来に大きな変化をもたらす可能性の要因です。ドライビングフォースで縦横の軸を作ると、十字架ができ、その十字架で切った4象限がシナリオの骨組みとなるのです。

それでは、具体的に考えていきましょう。例えば、このブログを書いている私は人材育成を支援する企業に所属し、読者の皆様は、組織の人材育成に携わっている方が多いかと存じます。そこで、イメージしやすい5年後の人材育成と成長市場を軸に考えてみましょう。

先ず1つ目のドライビングフォースを自組織の成長市場をどこにするかです。これは国内、もしくは海外とします。
成長市場: 国内市場 ⇔ 海外市場

2つ目は人材育成の手法です。従来型、もしくは新しいテクノロジーを使った手法とします。
育成手法: 従来の手法 ⇔ 新しいテクノロジーを使った手法

これを縦軸、横軸に分けると以下のようになります。

Scenario_graph

上述通り、十字架に区切ることにより、4つの全く違うシナリオを描くことが出来ます。未来はひとつではありません。様々な未来を描くことが重要なのです。
それぞれのシナリオの可能性は以下の通りとなります。(あくまでも私の創作です。)

シナリオ1:
組織の多くは日本人で占められ、国内が主要マーケット。自社もライバルも新たなテクノロジーを使った人材育成に取り組んでいる。

シナリオ2:
国内よりも海外マーケットのシェアが伸びているため、海外との人材交流も進み、人材のグローバル化が進む。海外では当たり前になっている新しいテクノロジーを採用する必要がある。

シナリオ3:
主要マーケットが海外に移ってきているため、グローバルな人材交流は盛んになっている。育成方法は長年経験と実績のある従来手法を取ることが基本方針である。

シナリオ4:
マーケットは依然国内が主要。人材育成も変わらず従来の手法を継続していく方針。

このように5年後には4つの可能性が考えられるようになり、大きな違いになることが分かります(場合によっては、それぞれをもっと細分化し具体的な可能性をイメージすることが出来ます)。そして、この骨組みに肉付けし、もっと具体的に作っていきます。これらを基に自組織の戦略について真剣に議論し、考えることができるようになってきます。
例えば、
・われわれの進むべき道は本当に海外で良いのか?国内なのか?
・どういった人材を採用すべきなのか?
・どのように育成を考えるべきか?
・テクノロジーに投資すべきか?原資は?
・従来の育成手法で本当に良いのだろうか?
・われわれがストップ(やらない)すべきことは何か? 等々

以上の例のように未来を複数描くことは、自組織について真剣に考える機会となります。この機会を一部の人だけではなく、多くの人と共有し携わってもらうことで、より多様性を含んだ未来シナリオを作ることが出来るようになります。

 

ブラックスワン

シナリオプランニングの世界では、不測の事態のことをブラックスワンと言います。白鳥は白いのが当たり前、黒いはずがないというのが通説ですが、稀にブラックスワンは生まれるのです。ナシーム・ニコラス・タレブが著した「ブラックスワン」(ダイヤモンド社刊行)では、ブラックスワンの特徴を以下の通り、3つ挙げています。

  1. 極めて珍しく、起きる確率が非常に低い
  2. ブラックスワンが起きると、稀に見るほど甚大で深刻な影響があること
  3. 起きた後に、人々が振返って当たり前だと言うこと。起きるべくして起きたこと

残念ながら、自然災害、疫病、様々な事件、事故などの不測の事態、ブラックスワンは必ず起き、それを避けることは出来ません。立てたシナリオも、それに応じて修正することが必要です。

Withコロナ、Postコロナの2021年も大きく変化する可能性があります。変化こそが永遠の真実かも知れません。変化に備え、その変化をポジティブに変えるために、是非ご一緒して参りましょう。

There’s just one thing that’s permanent in this world, and that’s change.                                         Henry Ford
この世には、ただ一つだけ永続的なものがあり、それは変化だ。                                      ヘンリー・フォード

クインテグラルでは、皆様のご要望に応じた内容でシナリオプランニングの研修も提供しています。

詳細は以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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