日本精工株式会社

グローバル経営大学を通じて、世界に通用する次世代幹部候補を育成する:グローバル人材育成のために奔走する研修担当者の舞台裏

  • グローバル人材育成
  • 次世代リーダー育成
  • ハイポテンシャル

さらなる現地化推進のために、2011年から海外主要ポストの後継者候補を育成するグローバル経営大学(GMC)を開始した日本精工株式会社。次世代後継者を育成するために実施するアクションラーニングでは、何を目的にどのような内容を実施しているのでしょうか。プロジェクトの企画から実施までのすべてを担当する山下氏に、テーマの決め方、人選、進行管理、全社的な協力体制の築き方など、伺いました。

日本精工株式会社

創立 1916年11月8日(大正5年)
資本金 672億円(2013年3月31日現在)
売上高 7,328億円(連結 2013年3月期)
従業員数 28,487人(連結 2013年3月31日現在

事業概要

1916年に日本で最初に軸受(ベアリング)を世に送り出して以来、日本における軸受のパイオニアとしてさまざまな軸受を開発・供給。現在、軸受の分野で日本第一位、世界でも有数の地位を誇る。軸受の精密加工技術を利用し、自動車部品、精機製品、電子応用製品の分野にも進出。1960年代初めからグローバル展開を本格化。1970年にはブラジル、その後も北アメリカ、イギリス、アジア諸国に新たな生産拠点を開拓。1990年には英国最大のベアリングメーカーを買収し、ヨーロッパ市場での地位を強固なものとする。1990年代中ごろから中国・アジアへの事業展開を加速。特に中国では研究開発から販売、技術サービスまで自己完結できる強固な体制の構築を進めている。

御社には、グローバル経営大学(GMC)という研修があるそうですね。

日本精工株式会社 人事部 グローバル人事室 山下 正洋氏

日本精工株式会社
人事部 グローバル人事室
山下 正洋氏

日本精工では海外法人の主要幹部ポストの現地化を進めています。事業部の本部長、各地域の人事部長、ファイナンスやITといった部署の責任者などです。こうしたポストを担う後継候補者を育てるため、全世界の部長・課長クラスのマネージャー層10名前後を対象に、2011年度からグローバル経営大学と呼ばれる育成プログラムを開始し、今年2回目が終了したところです。
約8カ月の期間中、当社の進出先である国々4~5カ所に会場を移しながら研修を実施します。今年は日本、中国、ASEAN(シンガポール、タイ)、ドイツ、日本と舞台を変えながら全5回のセッションで構成しました。
毎年、何らかの経営課題をテーマに選び、受講者がチームで検討し、各地に特化した情報も吸収しながらディスカッションを深めていきます。そして最後のセッションで、経営陣を前に提言を発表します。実際に活動しながら学ぶアクションラーニングの手法を取っています。
アクションラーニングのテーマは、例えば、新興国における事業戦略や会社がエクセレントカンパニーとなるための施策など、期ごとに検討しています。
ほかにも経営戦略や会計、マーケティングなど経営の基礎力を磨くためにEラーニングの機会も用意します。

第2回グローバル経営大学(GMC)全体像

※コンピテンシーアセスメントでは、グローバルリーダーとして必要とされるコンピテンシーとは何か、アセスメントを通して気づいてもらうことが目的。またアセスメントとパーソナルコーチングは連動しており、アセスメントの結果をもとにコーチングを実施する。リーダーとして伸ばすべき点が何か、伸ばすためにどのような取組みをすべきか、等をコーチと議論し、能力開発の意識づけを与える。

※個人学習(eラーニング)は、レベルの異なる受講者がそれぞれに必要な知識を習得できる機会として提供。
(ここで実施されたeラーニングサービスは、当社からのご提供ではありません)

どのような経緯からこのグローバル経営大学の開設に至ったのですか。

当社は海外29カ国147拠点で事業を展開しています。事業のグローバル化が急速に進んでおり、今や海外売り上げ比率は50%以上、海外人員比率は約60%です。国内需要の伸びが頭打ちになっている今、成長の源泉は海外にあります。今後、グローバル企業や新興国の地場企業でマーケットを拡大していくためには、価値観や文化の異なるお客様が相手ですから、これまでのように日本から来た駐在員だけでは対応しきれません。

当然、現地市場に精通し、コミュニケーションを円滑に進められる同文化圏の人材にリーダーを任せたほうが効果的ですし、事業成長の可能性も高まります。そこでこうした成長を担える次期幹部候補を会社全体で育てることになったのです。

世界各地を巡る大掛かりな研修ですが、山下さんはどのような役割を担っていますか。

私は、このグローバル経営大学の推進役として企画運営に携わっています。

この研修全体の企画にはどのくらいの時間をかけたのでしょうか。

開講したのは2011年ですが、実は構想自体は前からありました。例えば、2008年ごろには、日本、欧州、米州の3極で進める企画も立案しましたが、様々な状況の変化のために実現に至りませんでした。実施が延期になってじっくり練り直していたところ、新興諸国、主にアジアの存在感が高まり、アジアでの現地化を推進して売上を拡大することが急務になってきました。その結果、文字どおりグローバルな規模での実施に変わったのです。

最近は、弊社だけでなく、多くの日本企業で海外幹部候補育成が盛んになっていることもあり、他社の研修と比較検討しながら企画を練っていきました。

アクションラーニングのテーマは、どのように決定するのですか。

一般的には、大きく分けると2つのアプローチがあると思います。1つは、現在の経営課題を現実に即して追っていき、事業戦略を練り上げるような活動です。もう1つは、企業理念や価値観の浸透・共有などといった大きなテーマです。過去2回のGMCでは、それぞれのアプローチでテーマを設定しました。
決定の流れとしては、会社の事業戦略や経営トップからのメッセージからキーワードを挙げて、グローバルチームで取組むことに意義のあるテーマを関係者で議論して決めています。たたき台作成のヒントにしているのは、やはり社長の思っていること、話していることです。このように、経営トップの思いや事業戦略を体現するようなテーマを選ぶことは、受講者をモチベートするだけでなく運営をスムーズに進めるうえで非常に大切です。

受講者はどのように決めるのですか。選定に当たってのご苦労はありますか。

各地域と人事部で主要幹部ポストの後継候補者の今後のキャリアプランを議論しながら決めています。研修の目的自体は、海外のトップもよく理解しているので、想定外の人がやってきて我々運営側が慌てるようなことはありません。

強いてあげれば語学力の問題があります。この研修はすべて英語で実施します。欧米からの受講者は英語のネイティブだったり、日常英語を使いこなしたりしている人々なのですが、日本、韓国、中国の参加者は語学が大きなハードルになっています。いずれもTOEICのスコアは優秀な人たちですが、ディベートでは苦労しています。

仕事ができて、幹部としてやっていける資質を備えていて、しかも英語が使いこなせる人材を人選していかなければなりません。

(受講者の経験に)違いがあるからこそ、生まれるシナジー効果がある。経験の差があること自体、“異文化”を乗り越えるトレーニングになる。

そういった人材の地域差は研修の進行上、問題になりませんか。運営責任者としては、どのように対応するのでしょうか。

地域の事業規模、現地化の浸透度の違いから、同じ基準で選抜した受講者であっても個々の経験に差が生じる場合はあります。この差を知識面で埋める一助として、先ほど挙げたようにEラーニングを導入しています。もっとも、ビジネスの現場での修羅場経験があるかどうかは、ディスカッションの中で差が出やすいですね。そこで、常に受講者同士がコンセンサスをとりながら進めるような指導を講師にお願いしています。

各セッションでは、チーム毎のディスカッション以外にも、現法トップの話、現法や客先の工場見学などが含まれる。チーム課題の材料となる情報収集の過程で、各チームから上がってきた要望(現場でのアンケートの実施や特定の担当者との情報交換の場など)を調整するのも山下氏が担当。

経験がある者は、経験のない者にわかるように説明することが大切な能力ですし、経験のない者は一生懸命勉強して追いつこうとすることが大切です。これは違いがあるからこそ、もたらされるシナジー効果と言えます。経験の差があること自体、彼らにとってはもう一つの”異文化”を乗り越えるトレーニングになっているのです。

さらにアクションラーニングは、研修とはいえ1つのプロジェクトですから、プロジェクトマネジメントの上手な進め方も学ぶことになります。

運営責任者としては、全体の進行の遅れが気になりますね。

特に遅れの原因になりやすいのは、文化の違いから生じる理解の相違や言葉の問題です。英語がネイティブではない受講者の場合、思っていることがうまく伝えられていないと、大きなストレスになります。
私は、きめ細かく受講者の相談にのってケアするよう心がけています。英語がネイティブのメンバーには、他のメンバーとの間できちんとコンセンサスがとれているのか尋ねるようにしています。
時にはいったんメンバーを冷静にさせて、現実を客観視させる必要も生じてきます。その一環として、セッション間でアンケートをとります。チーム活動がうまくいっているかどうかを5段階評価で問うわけです。すると例えば、同じチームでありながら、うまくいっているという回答が4人、うまくいってないという回答が1人といった現実が浮かび上がります。そのギャップを埋めるためにディスカッションさせるのも重要な軌道修正になります

クラスの進捗を確認し、常にフォローアップを考える。

クラスの進捗を確認し、常にフォローアップを考える。すべてのセッションのクラスの後方には、必ず山下氏の姿がある。

その効果は出ましたか。

ええ、実際、研修の最後になると、ディスカッションひとつとってみても、スムーズで生産的な議論ができるようになり、受講者間の個人的なつながりも深まっています。

また、卒業生の反応として、「グローバルNSKのリーダーになることへの恐怖感がなくなった」「視野が広がり、グローバル企業の一員という意識が高まった」「グローバル編成チームでのプロジェクトマネジメントを経験できた」といった声が挙がっています。

その意味では、研修実施前に想定していたとおりの結果が出ていると思います。

受講者の声

  • リーダーとしての意識の向上
    • グローバル企業にとっての企業理念、方針管理の重要性に気づいた。
    • 視野が拡大し、グローバル企業の一員であることの意識が高くなった。
    • グローバルNSKのリーダーになることに対する恐怖感がなくなった。
  • グローバルビジネススキルの向上
    • 多様なメンバーによるディスカッションと合意形成スキルが身についた
    • 英語によるディベート力が向上した(非英語圏受講者)
    • プレゼンテーションスキルが向上した
    • グローバルチームにおけるプロジェクトマネジメントを経験できた。
      -時差への適応・体調管理含む(時差ボケ/電話会議等の時間設定)
  • リテンション
    • 社内ネットワークを構築できた。(トップマネジメント、各地域のコア人材)
    • 自分のNSKのキャリアにおいて、ハイライトの一つとなった。

ほかにも企画を練るうえでのご苦労はありますか。

この研修では各地の社内関係者による講義と、外部の専門講師による講義の両方から学びます。どちらにしても、まず目的があって、講義があります。何のために何を学ぶのかという基本を講師役の方々に事前にきっちり浸透させておかないと、一方通行の講義で終わってしまいます。研修自体のコンセプト、アクションラーニングのテーマなど、どういうプログラムを組んでいるのか、そして各講師にお願いする講義はどうあるべきなのか、外部講師も含め、講師役ひとりひとりに、事前にしっかりインプットすることを心がけています。

推進役としては、これが各セッション前に一番時間を掛けていることです。素晴らしい講師であっても、任せっぱなしではいけないということです。

運営を成功させるうえで、鍵となる人々を上手に巻き込んでいくことが大事ですね。

ええ、講師役に限らず、研修自体に関わる人々をいかに巻き込んでいくかが重要です。
当社のグローバル経営大学は、各地のトップや現場のキーパーソンに話をしてもらう機会も少なくありません。そこで、各地域の人事部長クラスと一緒にコンセプトを固め、講師役と話し合って講義内容を決めていきます。

グローバル化を高らかに謳っても、日本の本社と海外の拠点では、捉え方に若干温度差があるかもしれません。海外の人事部門の経験を尊重しつつ、会社としての方向性を浸透させて協力体制を作っていく必要があります。各地域の人事の代表を集めて課題を共有するグローバル人事会議を定期的に開催していますので、この中でもグローバルチームとしての方向性を伝えるようにしています。

その際、経営トップがこの研修を真剣に推進していると言えるかどうかで、説得力も大きく違ってきます。当社の場合、研修に対するトップの関与が大きいので、海外の人事メンバーとも話しが通じやすいのかもしれません。

各地域の中核人材、事業を引っ張る人材にセッションでの講師役を依頼する。こういう人たちをいかに本気にさせるかが、運営側としては腕の見せどころ。

社内の講師役は、どのような方々ですか。

各地域で中核となっている人々、事業を引っ張っている人々に、各セッションでの講師役を依頼しています。我々運営側としては、こういう人たちをいかに本気にさせるかが腕の見せ所です。

実は、今回、社内講師役をグローバル経営大学第1期の卒業生にお願いしました。こうした卒業生人脈がどんどん広がってくれれば、実際のビジネスの場でも実を結びます。

卒業生が毎年少しずつ増え、育っていくということは、当社の経営を深く学び、同じ価値観を共有する仲間が増えていくことを意味します。そしてこういう人たちが、実際の業務で手を結び合ったり、再び研修の場で講師役として帰ってきたりする。これは好循環というほかありません。

今年の卒業生たちは、卒業後に取り組みたい目標をリストにして、実際に何らかのアクションを起こしたときに仲間同士で報告し合っているようです。自発的にこういう活動に取り組んでいること自体、大きな効果であると感じています。

社内の講師役

今回、外部講師としてGKMC(現Quintegral)が講義を担当しています。GKMCを選んだ決め手は何ですか。

GMC卒業生からのインプット

~セッション1の2日目

参加者が2つのチームに分けられ、これから始まるチーム別課題に対するひと通りの解説が終了。いよいよアクションラーニングが始まるこのタイミングで実施されたのは、昨年GMCを体験した卒業生によるプレゼンテーションです。
ずばりテーマは、「Message from GMC Graduate(GMC卒業生からのメッセージ)」。
昨年参加された受講者による、40分ほどのプレゼンテーション。
この研修で得られたものは何か?チーム課題を進める上で注意すべき点は何かなど、卒業生だからこそ語れる貴重な経験談がインプットされました。
このように年度をまたがったGMC受講生と卒業生との交流は、未来のビジネス現場において有効なNSKのグローバルネットワークを構築するという好循環に繋がっていく。

<私が研修を通して得た4つのこと -(前年度卒業生のプレゼンテーションより主な項目)>

Message from GMC Graduate

  1. Human Network
    – Various culture, different background
  2. Team Building Skill
    – Baby to start walking just after born?
  3. Presentation Skill
    – What happened on the very final day!
  4. Undertaking Leader’s Responsibility
    – People already recognize you as a leader

世の中には、研修会社がたくさんありますが、海外で買ってきたテキストをそのまま翻訳して使っているような会社も少なくありません。

その点、GKMC(現Quintegral)はすべて自前で開発している点が評価できます。また、グローバルビジネスに何が必要なのか、何をどのように高めていくべきなのかについても、非常にノウハウが豊富です。英語のコンテンツがしっかりしていて、何よりも経験に裏打ちされた優秀な講師がいる点を重視しました。

また、講師選びの際、いろいろな研修会社の講師の方々と話をしましたが、GKMC(現Quintegral)の講師は、私たちに合わせて非常にわかりやすくコミュニケーションをしてくれました。英語もとてもわかりやすく話してくれました。
これは見落としがちなのですが、相手に合わせて話す能力は、国際的なメンバーが集まる研修では非常に大切だと思います。これだけ文化が違うメンバーが集まると、英語ひとつとっても国によって発音が違います。そういう状況を即座に察知して、みんながわかるような話し方ができる講師は、本当に貴重です。

実は私は以前、研修会社に勤務していたことがあるのですが、こういう配慮ができる講師は、国際的な指導経験が豊富と言っていいと思います。この能力は、講師に限らず、グローバル人材であるための重要な条件でもあります。

最後に、研修の運営責任者としていつも大切にしていることを教えてください。

研修という”箱”を作って終わりではなく、常に目的を見失わず、受講者が成長できるような機会づくりに力を注ぐことです。

また、幹部候補の研修をする以上、研修後に幹部ポストに昇格していく姿を実際に社内に見せていかなければ、研修自体が絵に描いた餅になってしまいますし、受講生に選ばれた人も、何のためにやっているのか疑問に思うはずです。ですから、卒業生をいかに幹部人事に結びつけていけるかが大きな課題です。ちなみに卒業生に対して、フォローアップセッションの企画も構想中です。GMCで学んだ内容を忘れないために、そしてさらにそこからスキルアップなり、成長してもらうための仕組みを考えているところです。もちろん、築いたネットワークを絶やさず継続してほしいという狙いもあります。
幹部ポストへの昇格は、すでに少しずつ実績が出ているので、もっとそういう事例を増やしていきたいですね。

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