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リーダーシップはみそ汁に似ている?

リーダーシップはみそ汁に似ている?

 わが家の子供たちはアニメを見るのが大好きだ。アニメは日本の代表的な文化・芸術の1つとして、グローバルでも確固たる地位を確立している。私は小さい頃からアニメに慣れ親しんできた日本国民として、何となく誇らしい。過去の人気作などを子供たちに紹介しては感想を聞き、一緒に楽しんでもいる。

ザ・日本の食卓、ザ・安定感、ザ・日本の文化
 夕飯時にはテレビをつけることが多い。子供たちはオンタイムでやっているテレビ番組よりも、HDDに撮りためているアニメを見たがる。同じ内容の回でも気に入れば何度でも見るので、常に先の展開を知っている内容を、これまた良く慣れ親しんだ日本食を味わいながら夕飯時を楽しんでいる。ザ・日本の食卓、ザ・安定感、ザ・日本の文化、である。

 子供たちの最近のお気に入り作品は、フジテレビのノイタミナ枠で放映している「王様ランキング」。余談だが「ノイタミナ」は、英単語のAnimationを逆から読んで、NoITaMiNaである。「王様ランキング」は、いわゆるHero’s Journeyで面白い。一度放映された回は、子供たちが数度は見返すので、私も内容はバッチリ理解しているつもりである。バッチリであるからこそ、アニメを見ながら、思考は他に飛んでしまうことがある。「王様ランキング」って英語にしたら、キングスランキング、「ふっ、ダジャレかよ。」・・・・まったくもって嫌な大人である。

みそ汁の具材ランキング
 ある晩の夕食後のこと、家族でランキングの話になった。もちろん、走る王様 (Run King) ではない。物事の順位をつけるランキングである。8歳の息子と、妻と私、3人が各々の好きなみそ汁の「具」ランキングを発表し合うというものだ。3歳になる娘はリビングを走り回っていたので棄権。Run Kidsである。

 妻はそのランキングを聞いて、今後の夕飯のみそ汁の具の参考にすると言っている。きちんとしたメッセージを伝えなければならない。相手に私の好み (特性や嗜好) を伝え、今後の妻の行動に影響を与える大事なメッセージになるのである。世の管理職、マネージャー、リーダーの皆さんが、部下やメンバーに対して発する言葉と同じである。どう伝えるかによって、相手の今後の行動が変わるのである!

 もちろん、私のランキング1位と息子のランキング10位を比較しても、息子のランキング10位の方が妻に与える影響は大きいに決まっている。もしかしたら最初から決着のついている負け戦なのかもしれない。それでも果敢に挑もう。たとえ結果は思うようにならなくても、自分を偽ることなく、誠意をもって臨もう。

 私自身のHero’s Journeyが確かにそこにはあった。今だから正直にいうと、途中、悪い考えがふと頭をよぎった。どうせ何を1位にしたところで、今後のわが家の夕飯に変化を起こせない。私の好きな具の登場頻度が上がるわけではないのであれば、「渡りガニ」、「あさり」、「しじみ」など、わが家にとっては高級路線で攻めてやろう!と思ったのである。でも、ギリギリのところで思いとどまることができた。ぜいたく品だけを並べれば、確かに美味しいみそ汁にはなるけれど、やはり家計のことを顧みないで、持続可能な家庭が築けるわけではないのである。私は根菜が好きなので「大根」を1位にした。大根は、漬物の時とは全く違う存在感を示す。息子の1位は「ネギ」。妻は、「私は断トツで豚汁」とのこと。

私: 「いやいやいや、ちょっと待ってほしい、豚汁はみそ汁じゃなくて、別の料理でしょう」
妻: 「え?なんで?作り方も同じ、みそ味の汁だから、みそ汁でしょ?」
私: 「だったら、みそラーメンもみそ汁って言えるのか!?」
妻: 「みそもくそも一緒にするな~ (笑) 」
息子: 「うまい!」

 そう、みそ汁はうまいのである。そして、みそ汁は偉大でもある。どんな具を入れても、みそ汁として完成し、美味しい。焼き魚でも、ハンバーグでも、おかずが何であれ、みそ汁が一緒に出てくれば、夕飯として成立し、和食にしてしまうような気がする。日本の文化である。

リーダーシップを成立させる「具」がミソ
 もしみそ汁研修というものがあり、みそ汁の作り方を教えるとしたら、どう教えるだろうか?具は何でも良いのである。何が正しいみそ汁なのか?具を何にするのかは、その研修の提供者側の判断であり、腕の見せ所なのかもしれない。

 私が携わっている人材育成の研修のなかにも、みそ汁研修に似たようなものがある。それは「リーダーシップ研修」だ。リーダーシップというものは確かに存在するが、中身はさまざまな形や発揮の仕方があり、リーダーシップが発揮されることにより、いろいろなメンバーと共存して、組織を成り立たせる。リーダーシップを成立させる「具」はいろいろある。なんでも良いとまでは言わないが、要はリーダーシップが発揮できれば良いのである。研修提供側は「具」を何にするか、どのように表現するかによって、伝わりやすいものを提供している。研修会社の立場からすれば、要は「具」を何にするかがミソなのである。

 少し前の話になるが、毎日新聞に『「芸能界のみそ汁」勝俣州和さん』という記事が2日にわたって掲載されていた。

『決して主役ではないけれど、バラエティー番組では欠かせない。派閥にもとらわれず、誰とでも共演できる。司会者はメインディッシュであり主食だが、どんな司会者とも合わせられ、飽きのこないみそ汁のような存在』である勝俣さんの立ち位置を「芸能界のみそ汁」と水道橋博士さんが評した*とのこと。自分に今何が求められているかをとことん追求している勝俣さんは、スタッフの意図をくんで、的確に動いてくれるという信頼を得ており、「企画成立屋」とも呼ばれているそうだ。業界や仕事は違うが、リーダーシップの1つの形だなと、妙に納得したのを覚えている。
*毎日新聞2022年1月21日(金)P15 くらしナビ「芸能界のみそ汁」勝俣州和さん 上・下

 日本の誇る偉大な文化、アニメとみそ汁から、とても大切なことを学ばせてもらった気がした。

最後に
 わが家のみそ汁ランキングを棄権した3歳の娘は、まだあまり上手に発音ができない。「王様ランキング」が「おうしゃまたんにんぐ」になってしまう。それでも一生懸命「おうしゃまたんにんぐ、見たい!」と主張する姿がとてもかわいい。

 ニヤニヤしながら娘の姿を見ている私の頭の中では「おうしゃまたんにんぐ→王様Tanning→日焼けした王様」と自動的に翻訳され、サンダルに短パン、日焼けした肌で豪快に笑うみそ汁芸能人が王冠をかぶっている姿を思い浮かべていることを、家族は知らないだろう。

 最後に、「大根」も「ネギ」も当たり前すぎて、わが家の夕飯のみそ汁の「具」には以前と大きな変化はなく、相変わらず「豚汁」の登場頻度がやや高めであることを付け加えておこう。

 

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筆者紹介

山田 琢 Taku Yamada
クインテグラル株式会社

グローバルな仕事に従事しながら、国および企業文化の違いによる組織力の差に興味を持つ。それ以来、より良い組織を作るにはどうしたら良いのか、そもそも良い組織とは何かを探し求め、組織開発ファシリテーター・コンサルタント、企業内人事などに従事し、2018年より現職。人材育成の領域から、より良い組織作りに貢献することを目指している。


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