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ノーベル賞と皇室結婚から考えるDI&B

真鍋淑郎さん
 国籍を変えた理由について、ノーベル物理学賞受賞のプリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さんはこう述べました。
 「日本では、いつもお互いのことを心配しています。とても調和の取れた関係性で、うまく付き合うことが最も重要なことの一つです。他人に迷惑をかけるようなことはしません。日本人がイエスと言っても、それは必ずしもイエスを意味しません。ノーを意味することもあります。何よりも、他人に迷惑をかけるようなことをしたくないと思うからです。米国ではやりたいことをできる。他人がどう思おうが、私は気にしません。実際のところ、他人を傷つけたくはないけど、彼らが何を望んでいるのかは知る由もありません。米国での暮らしは素晴らしいと感じます。おそらく、私のような研究者は好きなことが何でもできる。使いたいコンピュータ、欲しいものはすべて得られました。私は調和の中で暮らすことはできないものですから、それが私が日本に帰りたくない理由です」

 真鍋さんは日本に帰れないのではなく、帰りたくない、帰らないと決断し、国籍まで変えたのです。当時の日本では彼を留めておくことはできなかったのでしょう。日本に窮屈さを感じ、好きな研究を続けるという自分の夢を叶えるために、日本を脱出せざるを得なかったのだと推察します。そのように決断したのは、60年以上も前のことでした。

元プリンセス
 つい先日、皇室から離れて、結婚された元プリンセスの会見での言葉です。
 「私たちにとって、結婚は、自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択でした。今、心を守りながら生きることに困難を感じ傷ついている方が、たくさんいらっしゃると思います。周囲の人のあたたかい助けや支えによって、より多くの人が、心を大切に守りながら生きていける社会となることを、心から願っております」

 「心を守る」という言葉が3回も繰り返されていました。ご自身の心を守るために結婚すること、心を守るための選択と決断であったこと、そして最後には、何年も傷付けられた経験から心を守る社会であって欲しいと訴えられ、元プリンセスの最後の会見は終わりました。結婚は当人にとっても、家族にとっても祝福されるものです。心を守るために日本を脱出せざるを得ないことがとても痛々しく感じます。私はこの若いお二人の門出と幸せを心より応援したいと思います。

 日本は調和を重んじ、互いを気遣い合う、すばらしい国とも言えます。自然災害の時は多くの人が団結して、助け合う姿が見られ、日本を誇らしく感じることもあります。しかし、個人の事情に及ぶ時はどうでしょうか。個人の意思、自由、願い、夢、行動、選択が周囲から監視・制限され、恐ろしいほどの同調圧力が働きます。真鍋さんと先日の元プリンセスの決断の間には60年以上もの年月の差があります。しかし、それぞれの会見から、いくら年月が経っても何も変わっていないと感じられ、お二人の息苦しさと窮屈さ、諦めがひしひしと伝わってきました。

 私には二人の息子がいます。こう歩んで欲しいと願う思いが父親の私の中にはありましたが、それは私だけの中にしまっています。もし私が望むような人生を彼らに歩ませてしまったら、彼らの人生は彼らのものではなくなってしまいます。彼らには彼らの人格があるのです。月並みではありますが、私が望む人生ではなく、彼らの人生を好きなように歩んで欲しいと心底願うばかりです。自分の歩みたいように歩めない人生ほど不幸なことはありません。

DI&B (ダイバーシティ、インクルージョン、ビロンギング)
 ここでD&I (ダイバーシティ&インクルージョン) について述べたいと思います。先日の加藤のブログでは「この数年で米国企業ではBelonging (親密な関係、相互的信頼) が付加され、Diversity, Inclusion & Belonging (DI&B) となり始めています」と紹介しました。Belongingは会社や組織に帰属しているというような意味合いではなく、むしろ周囲の人達に受け入れられた、あるいは仲間にしてもらったと本人が感じることを意味します。DI&Bに一気に展開したようですが、全てが繋がっています。「ああ、私はここで好きな研究を続けても良いのだ」「私は愛する人と結婚し、ずっと生まれた日本に住み続けても良いのだ」「私が歩みたい人生を歩んでも良いのだ。受け入れられたのだから」と感じることがBelongingです。

最後に
 当時の首相は「令和」という元号について、このように談話を発表しました。

「春の訪れを告げる梅の花のように、明日への希望と共に、一人ひとりが大きく花を咲かせられる日本でありたいとの願いを込めた」

「こうするべきだ」「こうでなければならない」という物事の見方は窮屈です。日本では最近「自粛警察」なるものが跋扈していますが、多様な考えや信条があることを認め、受け入れ、そして、安心して生きていける日が来ることを願って止みません。内外ともレインボーカラーのようにカラフルで素敵な世の中になることを夢見ます。それが本来の「調和=ハーモニー」なのではないでしょうか。

 

本ブログでご紹介した内容の詳細は、以下までお問い合わせください。
お問い合わせ:https://www.quintegral.co.jp/contact/

 

筆者紹介

未来への道標 A guide to future

新里 幹彦(ニッサト ミキヒコ)
クインテグラル株式会社

長年、日系・外資系企業でのマネージャーとして活躍。2013年よりクインテグラルで、日本国内の内資・外資系の企業の経営陣や幹部、次世代リーダーの方々を対象に、リーダーシップの強化、マネジメントスキルの向上、グローバルコミュニケーションの強化など、人事コンサルタントとして様々な課題に取り組んでいる。最近では、これらの経験を活かし、トレーナーとしても活動を開始。

 


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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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