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在宅勤務やリモートワーク環境でのチェンジマネジメント

 

チェンジマネジメント(変化・変革を実現できる)能力は、企業にとって更に重要になっていくと思われます。しかし、組織を変化させ、働く人たちの意識変革を成功させることは簡単ではありません。ましてや、在宅勤務のように働く場所がバラバラになってしまい、今までと同じ方法で組織を変化させ、働く人の意識変革ができるのでしょうか。トップの強いコミットメントは必須です。この点は今回の話から除いて、その他の観点でまだ解の無いこの変化・変革に関して、私が考えたことを少し紹介します。

チェンジマネジメントに関するフレームワーク

以前から変化・変革を実現する方法を学習するのに、MBAでチェンジマネジメントという専攻があるほどにいろいろと研究がなされている分野です。有名なフレームワークとしては、ジョン・コッターの変革の8段階プロセス、クルト・レヴィンの「Unfreeze/Change/Refreeze」のプロセスがあります。この他にも従業員が変化に直面した際の心理的プロセスを表した、シンシア・スコットとジャフ・デニスのチェンジモデル(拒絶・抵抗・探究・コミットメント)などもあります。
このように、変化・変革を実現するときには、組織全体からそこで働く従業員はもちろんのこと、それ以外にも、社内のプロセスや情報の流れ、人事評価などさまざまな要素が影響してきます。組織内の重要な要素を特定するときに使われるのが、世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーの7S(Strategy, Structure, System, Shared value, Style, Staff, Skill)です。
このようなフレームワークは、在宅勤務・リモートワークの環境での変化・変革でも普遍的に求められる観点だと思います。ただ、在宅勤務・リモートワークになってコミュニケーションの方法が変わったように、変化・変革を推進していく方法も見直していく必要があるのではないしょうか。

変化と変革の違い

見直しの話の前に、これから紹介する中で、「変化」と「変革」の言葉の使い分けに関して説明します。ここでは、「変化」と「変革」は物が変わる変容度合いで使い分けています。イメージとしては、変化は以前の状態がまだわかる程度の変化、変革は以前の状態がわからない状態になる程の大きな変容です。また、変化の中には、変革する途中の変化というものもあります。「変革」の例としては、1990年代以降のIBMがハードウェアからソフトウェアビジネスに事業の主体をシフトしたことや、水力発電会社として創業したイビデンは100年かけてからセラミック事業や電子事業に変革を遂げたなどが挙げられます。一方、「変化」の例としては、重機メーカーの小松製作所がKOMTRAXなどのICT機能を提供し始めたことや、最近の身近な例としては、飲食店が配達専門店を立ち上げたことなどがあります。

変化・変革を実現するには

上記で紹介した例を実現するには、提供する商品やサービスを変えるのは当然のこと、7Sのように、さまざまな施策を実行したことは容易に想像できます。例えば、市場での自社のポジショニングを変えるためにリブランディングする、新しい商品・サービスを提供するために販売方法や製造方法を変更するなどが挙げられます。さらには、それを顧客に紹介・納品する従業員に、今までとは異なる能力を求めるなどが考えられます。また、各々を実行するには、人事制度やITシステム、社内ルール、日々の判断基準なども変更が必要になってきます。これらを実行するためには、最終的には実行する人たちの変化、場合によっては意識変革が求められます。

人の意識や行動を変える4つの要素

数年前マッキンゼーの行った変化・変革に関するリサーチで、人の意識や行動を変える次の4つの重要な要素を紹介していました。
(1)その変化を体現しているロールモデルの存在
(2)自分に求められている変化とその理由の理解
(3)自分に求められる変化を実行するのに必要なスキルの習得機会と発揮できる機会
(4)変化に沿った社内プロセスやシステム
この4つが揃うと人の行動や意識が変わりやすいという結果でした。在宅勤務やリモートワークの増加で、今までのように同じ空間を共有しながら勤務する時間が減ってしまった状況では、上記4つの要素は変わらないかもしれませんが、具体的な施策が今までとは大きく異なっていくのではないでしょうか。

人が集まって醸成される文化

この4つの要素の(1)と(2)は、他者との何かしらの形態のコミュニケーションによって構成されていきます。このようなコミュニケーションの積み重ねが、その組織の文化を醸成していく要素、その組織の文化を知るための要素にもなります。変化・変革を成功させるためには、この文化を変えることがとても重要になります。AMAのアドバイザーでもあったピーター・ドラッカー教授の名言で、“Culture eats strategy for breakfast (企業文化は戦略に勝る)”というぐらいに人の行動に影響を及ぼします。
COVID-19が広まってから約1年になり、この文化が長期的に大きな課題になりそうだと感じています。数名以上が集まると、自然とそのグループ特有の文化が醸成されます。その文化の醸成に影響を及ぼす要素はさまざまです。その中の大きなものとして、自分の言動に対する他者の反応があります。同じ場所で勤務しているときは、常にその場の空気感があり、自分の言動に対して誰か何かしらの反応があったり、逆に他者の言動に自分が反応したりすることができました。このような無意識の経験の積み重ねやその場の空気感を読んで、その場のお作法やマナーのようなものができるのではないでしょうか。
先ほど紹介した4つの要素(1)のロールモデルに関しては、「こんな人がいます」のような紹介だけでは浸透しません。その人の良しとされる言動を他の人が行ったときにも、周囲から肯定的な反応を感じられ、また逆に、望まれない言動をとったときには否定的な反応を感じることでロールモデルが浸透していくのだと思います。(2)の自分に求められる変化については、自分が行ったことが求められていた変化として正しいのか、などを確認するためにも周囲からの反応は重要です。しかし、勤務している場所が異なると、周囲の反応というのは感じにくく、その機会も減ってしまいます。

組織内世論の形成

このような状況で、この(1)と(2)に代わるようなものを考えてみました。その結果、「組織内世論」というキーワードにたどり着きました。
少し話は遠回りになりますが、昨今の米国や香港での出来事、コロナ禍でもあれだけ団結し行動を起こす原動力が参考になります。ウォルター・リップマン著書の「世論(上下巻)」で書かれていたことで、次の箇所がとても響きました。

“・・・人と、その人を取り巻く状況の間に一種の疑似環境が入り込んでいることである。人の行動はこの疑似環境に対する一つの反応である。・・・その結果は行動を刺激した疑似環境にではなく、行為の生じる現実の環境に作用する。”

(W.リップマン,1987,p29 世論(上),岩波文庫)

リップマンによると、現実世界は複雑すぎで移ろいやすく直接知ることができないから、上記で紹介した文章のように、人は自分の諸観念に基づき現実世界から情報を拾い集め意味づけをし、行動に移し、それが現実世界に影響を及ぼしている、と書いていました。そして、この諸観念と現実世界のギャップが大きいほど、行動の結果として矛盾が広がり現実世界の破綻につながるといっていました。要するにプロパガンダによる変革のことです。
もし、組織の変化・変革を促進するために、この「世論」に書かれていることを参考にするとしたら、諸観念の形成から始まります。米国や香港、その他各国の例を見ると、メディアやネットでの情報が大きな影響を及ぼしています。特定の事象に対して、その背景や理由・原因を事実かどうか関係なく配信し、また関係する人たちのインタビューを公開し、聴衆の感情を刺激し行動を起こさせています。
もしかしたら、このようなプロパガンダ的な方法で、在宅勤務やリモートワークをしている従業員たちを巻き込みながら、組織の変化、意識変革を推進していくことができるのかもしれません。そのためには、社内での情報の配信内容、方法、タイミングなど、今までは社外に対して行っていたブランディングのようなことを、社内に対して行うことが重要になっていくのではないでしょうか。


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筆者紹介
加藤洋平(カトウ ヨウヘイ)
クインテグラル株式会社 取締役

クインテグラルの前身であるAMAの日本支社に2008年に参加し、組織開発、グローバル人材育成、次世代リーダー育成、などさまざまな学習理論に基づき幅広いソリューションを構築、提供している。人の可能性を最大限開花させるお手伝いをすることをミッションとし、日々の業務と継続的な学習をおこなう。

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AMAは、1923年にニューヨークで設立されたマネジメント研修の分野で世界を代表する国際教育研修機関です。世界において10万人以上の個人クライ アントと約1万社もの法人クライアントから高い評価を受けています。 グローバルナレッジマネジメントセンターは、2012年2月より、AMA (American Management Association)のサービスを国内で唯一提供する会社として設立され、2017年10月、アジアへのAMAサービス展開 に合わせ、社名をクインテグラル株式会社に変更いたしました。


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