協和発酵キリン株式会社

グローバルに組織を率いるゼネラリストを育成する「グローバル・エグゼクティブ・プログラム

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2008年10月、旧協和発酵と旧キリンファーマが合併して生まれた協和発酵キリンでは、海外部門の経営を担う将来のリーダーを発掘するために、2010年から研修制度「グローバル・エグゼクティブ・プログラム」を設けています。このプログラムを運営する人事部人材開発グループ マネジャー八木澤智正氏に、グローバル人材育成における取り組みについてお聞きしました。

協和発酵キリン株式会社

設立   1949年7月1日

※2008年10月1日付でキリンファーマ株式会社との合併により「協和醱酵工業株式会社」より商号変更

資本金 26,745百万円(2010年12月31日現在)
売上高 413,738百万円(2010年12月期)
従業員数 7,484人(連結ベース、2010年12月31日現在)

事業概要

「医薬」「バイオケミカル」の事業分野において、高度な技術とユニークな視点で独自の研究を進め、さまざまな産業分野に高品質の製品を開発・提供している。がん、腎、免疫疾患を中心とした領域で、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使し、画期的な新薬を継続的に創出。開発・販売をグローバルに展開し、世界の人々の健康と豊かさに貢献する日本発のグローバル・スペシャリティファーマを目指す。 また、バイオケミカル事業も協和発酵キリングループとして展開。医薬事業の一翼を担い体外診断薬分野での事業展開と、世界トップレベルの発酵法と合成法の技術を活かした事業を中核として、グローバルな成長を目指している。

人事・人材教育において、2010年4月から新制度をスタートされました。

当社は「バイオテクノロジーを基盤とし、医薬を核にした日本発の世界トップクラスの研究開発型ライフサイエンス企業を目指す」をビジョンに掲げ、多様なニーズに対する新たな価値の提供を通じて、グローバルな成長を遂げることを目的としています。具体的には、がん、腎、免疫疾患を中心とした領域で、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使して画期的な新薬を継続的に創出し、開発・販売をグローバルに展開することにより世界の人々の健康と豊かさに貢献する日本発の「グローバル・スペシャリティファーマ(GSP)」となることを事業ビジョンとしています。 当社は研究開発型の医薬企業ですが、ひとつの医薬品を開発するには、10年以上の開発期間を要し、研究開発費は数百億円かかることもあります。さらに医薬品の研究・開発・申請・生産・販売には数多くのハードルがあります。
当社の事業ビジョンを具現化するためには、このようなハードルを乗り越えて事業化し、さらにグローバル展開ができるような、広い視野と専門性を兼ね備えた人材の育成・選抜が必要不可欠と考えており、その考えを盛り込んだ制度を導入することにしました。

新制度の特徴は?

会社として社員一人ひとりに求める能力がどれだけ発揮されているかを振り返ることにより、1年間の成長を認知し、本人の能力開発上の課題やその改善機会を特定する「育成ツール」である、GSP(グローバル・スーペリオル・パフォーマンス)評価の導入が特徴です。GSP評価は、いみじくも「「グローバル・スペシャリティファーマ」と同じ頭文字を持ちます。GSP評価では、協和発酵キリンの一員として求められる基礎的な力を要素とする基礎力、職務をまっとうする上で求められる力を要素とする職務能力、職務内容そのものの重要さや影響の大きさを要素とする職務、の3つの要素で評価を行うこととしています。当社の人材教育もGSP評価で求められる能力とリンクするよう工夫しています。

具体的には、どのような能力が求められているのでしょうか?

たとえば、課題設定、課題遂行、コミュニケーション、チャレンジなどが職務能力として求められています。 ただし、職種によって、職務遂行のスタイル、あるいは職務能力の発揮場面や行動例に違いがあるので、職種別に等級基準を分けています。より具体的な等級基準を設けることで、育成ツールとしての効果を高め、医薬専業企業に必要な各職種の専門性の伸長に繋げていきたいと考えています。しかしながら、それだけではなく、一定の専門性と広い視野を兼ね備えた企画業務を担う人材や、将来の経営を担っていく人材の育成も、同時に進めていかなければなりません。そのため、人事異動の面においても、高度な専門性を形成していくようなパスだけでなく、専門分野以外の分野でも幅広く経験を積むようなパスも考えています。どのような職種においても恒常的に能力を発揮することができ、グローバルに活躍できるゼネラリストの必要性が増してきているのです。

人事部 人材開発グループ
マネジャー 八木澤 智正氏

グローバルに活躍できるゼネラリストとは?

ひとことで言えば、答えのない課題に取り組みながら、組織を率い、成果を出す人材ということでしょうか。それに加えて、環境の変化に耐えて、どのような環境でも活躍できるタフさも重要です。 グローバル・マネジメントを担う次世代エグゼクティブ人材を育てることを目的に、このような素養を伸ばすことによって、当社では「グローバル・エグゼクティブ・プログラム」を新たに設けました。

統合後、人財育成の方針はどのように変わりましたか?

方針は統合前と変わりません。経営方針の主軸には、HPO、「ハイ・パフォーマンス・オーガニゼーション」の実現があります。個別の部署でいえば、研修の対象者や内容が違ったところを、たがいにすりあわせるといった細かい作業はあります。

ゼネラリストとは、答えのない課題に取り組みながら、組織を率い成果を出す人。そして、どのような環境でも活躍できるタフさも重要。

プログラムの流れ

「グローバル・エグゼクティブ・プログラム」について教えて下さい。

旧協和発酵にも、旧キリンファーマにもMBA留学制度がありました。私自身も、旧協和発酵でカリフォルニア・クレアモントにあるクレアモント大学院大学の経営大学院、ドラッカースクールにMBA留学させてもらった経験があります。当時のグローバル人材育成の考え方は、「いつか来るグローバル化に備えて、年1~2名のごく少数の社員を鍛えておこう」というものだったと思います。しかし、グローバル・スペシャリティファーマを本格的に目指すには、より多くの人材を、より短い期間で育てなければなりません。しかしながら、質は落とせません。そこで、グローバルに人材教育コンサルティングを展開するAMAにプログラムに相談し、組み立てたものが「グローバル・エグゼクティブ・プログラム」です

プログラムのポイントは?

専門性に特化するのではなく、ゼネラリストとして組織を率いていく力を養成することに重点を置きました。
たとえば、せっかく海外にMBA留学をしても、「英語で議論するのは、あまり得意ではないので、数字を扱うことが中心のファイナンスとアカウンティングを専門的に学んで帰ってきました」という人がいます。そういう人が海外法人の社長となった場合、きちんと仕事ができるかというと、必ずしもそうではないのではないかと思います。ファイナンスやアカウンティングといった各分野の専門家と話ができる能力はある程度必要ですが、それだけでは不十分であり、ゼネラリストとしてのマネジメント力、グローバルの場で成果を出す能力が不可欠なのです。
当社のような日本企業がグローバルに出て行くためには、少数の社員をMBAプログラムに派遣するのではなく、グローバルに通用するゼネラル・マネジメントについての英知が体系化されているプログラムを数多くの社員が学ぶことがまず急務であると考えました。そこで、それを日本で実現できるAMAのプログラムに目が止まったのです。

AMAを採用する決め手となったのは?

ひとつは、いまお話しした通り、世界で通用するマネジメントが学べる教育プログラムであったこと。もうひとつは講師の質です。お会いした講師はまさに「ゼネラリスト」でした。プログラムには、戦略や組織行動論、ファイナンス、マーケティングなどいくつもの科目を入れ込んだのですが、通常の場合、そのようにいくつかの科目をお願いすると、お願いした科目分だけ講師が必要です。しかし、我々のプログラムには、そのレベルの専門性を求めているわけではありません。そこまで専門的でなくてよいので、ひとりの講師に、ゼネラルに全体のつながりを教わることが重要だと思いました。AMAの講師にデモ授業をお願いし、生徒役として私が実際に授業を受けて、内容をチェックした結果、この内容なら当社のゼネラリストを養成することができると確信しました

デモ授業では、何をチェックされたのですか?

自分で考えさせる授業かどうかということです。日本の授業や研修は「ワンウェイ」なのがほとんどですよね。先生の頭はフル稼働している一方で、生徒の頭はどれだけ稼働しているのかよくわかりません。しかしAMAのプログラムには、先生の問いかけに対して、考えるのは受講者側という仕組みがありました。考え抜き、問い詰められていく中で、マネジメント能力を高めていくことが期待できました

研修の対象者をどのように選ばれているのですか?

昨年は次世代のグローバル・リーダー候補を指名制で選びましたが、今年は挙手制と部門推薦のふたつの選抜方式を用いました。「研修は事業戦略であり、福利厚生ではない」という考え方から、昨年度の第一回目では会社で人選し、10名で実施しました。しかし、社員の中には意欲のある人材がいます。グローバル・エグゼクティブ・プログラムは新聞でも紹介され、社内広報でも特集されていますので、プログラムの存在は広く知られています。「このプログラムを受けたい」と言ってきた社員に対して、「いや、それは指名制なのであなたは受けられません」というわけにはいかない。社員のモチベーション維持も考えなければなりません。意欲のある人の門を閉ざすようなことはしたくないと考え、挙手制を取り入れることにしました。
プログラムは英語で実施されるため、挙手制も部門推薦も、まず論文を英語で書いてもらいます。論文でみるのは視座の高さ・視野の広さです。その上で、英会話力のチェックを電話で行いました。本当に授業についてこられるかどうかを判定するため、選定の段階で外部教育機関にお願いして、電話でどの程度受け答えができるかのチェックを行いました。

各国の事業のトップになる可能性のある人にどんな教育が必要かを考え、コンテンツを厳選する。

今年は何人受講されているのでしょう?

今年の受講者は昨年から5名増やし、15人としました。そのうち日本人は12人で、あとは当社の海外法人からの参加者です。今年は、日本人社員30名弱から応募がありました。選考はゼロベースで毎年行うので、今年選ばれなくても、来年受講できる可能性はもちろんあります

意欲のある人材にチャンスがあるのは素晴らしいです。プログラムを拝見しましたが、内容は多岐に渡っています。

はい、AMAにお願いした講義プログラムは、大きく分けて3つのフェーズに分かれているのですが、2010年に行った第一回の第一フェーズではリーダーシップ、ファイナンシャルアカウンティング、戦略論を、その次のフェーズではマネジメントアカウンティング、組織行動論、戦略論Ⅱとチームレビューを、最終フェーズではプレゼンテーションを行いました。
プログラム内容を決めるにあたっては、課題の分量が多くなりすぎないよう、”各国の事業のトップになる可能性のある人に、どんな教育が必要か”というところから考え、コンテンツを厳選しました。それでも受講者からは「もりだくさんすぎる」「分量が多い」と言われました。「日本語でもそんなに一度の大量の本を読んだことがないのに、ましてや英語でこの分量のテキストを限られた時間に読んで理解しなければならないとは!」と感じる受講者が多かったようです(笑)。
リーダーシップ論は、人を率いていくときにどうあるべきか、といったことで、わりとすんなり入っていけるものだったと思います。その授業の際には、社長の松田も研修室を訪問したり、役員も戦略について語ったりしたので、本物のエグゼクティブを間近に見ながら、「ああ、リーダーシップってこんなことなのかな」と、結びつけて考えられたのではないかと思います。それに比べて、戦略やアカウンティングは難しかったようです。とくにアカウンティングは、個人事業主であればPLやBSは会社の経営に関わるものですので絶対に理解しておかなければならないものですが、組織の中にいると、そのような危機感は個人事業主に比べれば薄いため、必然性を理解してもらう工夫が必要になります。

第一フェーズの終了後から、「グローバス」(GLO-BUS)を取り入れたということですが、「グローバス」とは何でしょう?

ビジネス戦略に関するオンライン・シミュレーション・ゲームです。2010年度のプログラムでは、受講生を3チームに分け、カメラメーカーをチームごとにバーチャル経営させ、グローバルマーケットで売上を競わせました。グローバスは研修プログラムと並行して行いました。研修で学んだ内容を実践にどのように活かせばよいのかを浸透させること、競争意識を持つこと、コミュニケーション力を養い、チームワークを構築することを目的に取り入れました。研修は10ヶ月に渡って行われますが、プログラムとプログラムの間の数ヶ月空いた期間に、学んだ内容を忘れずにいるためにも、グローバスは非常に有効でした。離れた場所にいるチームメンバーがオンラインでコミュニケーションをとり、講義で習ったことを実践に近い形で他のチームと競い合いながら結束を強めていけるというのも、グローバスを活用するメリットであると思います。

さて、2010年度の研修プログラム全体を通して、参加された方のご感想はいかがでしたか?

「10名規模の人数のセッティングが有効だった」「研修内容が多すぎた」「グローバスは大変だったがチームの結束を高める上で大変有用だった」「非日常の経験として、英語で戦略の議論、英語でのプレゼンテーションを行ったことは非常に有意義だった」といった声が多く聞かれました。また、ファイナンシャルアカウンティングに関しては、講義形式ではなく自習形式で学ぶほうがよいのではないかという意見があり、これは今年度からそのように改変しています。
協和発酵キリンは、2010年~12年度3か年中期経営計画で海外販売体制の整備を目標に掲げています。2011年英製薬企業のプロストラカンの買収によって欧米での自社販売ネットワークを確固たるものにしました。
このようなことから、今後グローバル展開にいっそうの加速がかかることは間違いありません。「グローバル・エグゼクティブ・プログラム」が、当社の教育の中で最も重要なものと位置づけられているのはその証拠ともいえます。日本にいながらにして、世界で通用するMBA教育と同等以上の内容の研修プログラムを実施することで、世界を相手にビジネスしていく人材を早期に育成できると私たちは考えています。

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